~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向を毎月お届けします。

4Kバイトのセクタ・サイズ対応Quad SPI NOR型フラッシュ、車載/産業/通信機器向けに長期供給を保証

品田唱秋 氏 浜崎光男 氏

 フラッシュ・メモリには、NAND型とNOR型という2つのタイプがある。
いずれも不揮発性メモリだが、最適な用途はそれぞれで異なる。NAND型は、画像ファイルや動画ファイルといったデータの格納に適している。その最大のアプリケーションはSSD(Solid State Drive)である。
一方のNOR型は、車載機器や携帯電話機、デジタル・カメラ、プリンタなどの電子機器に不可欠なファームウエアの格納に使われている。

 NOR型フラッシュ・メモリは2000年ごろ、その市場規模はフラッシュ・メモリ全体の約9割を占めていた。NAND型フラッシュ・メモリは脇役だった。
しかしその後、NAND型フラッシュ・メモリの市場規模が急拡大し、市場での立場は逆転されている。

 だからといって、NOR型フラッシュ・メモリの重要度が低下したわけではない。
今もなお、さまざまな電子機器においてファームウエア格納用不揮発性メモリとして活用されている。今回は、NOR型フラッシュ・メモリの製造/販売を手掛けるサイプレス セミコンダクタ MPDマーケティング本部 部長の浜崎光男(はまさき・みつお)氏と品田唱秋(しなだ・まさあき)氏に、NOR型フラッシュ・メモリ市場の最新状況や、アプリケーションの変化、最新製品などについて聞いた
(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

現在のメモリ市場の状況を教えてほしい。

NOR型フラッシュ・メモリの市場予測

図1:NOR型フラッシュ・メモリの市場予測
米HIS Markit社の調べ。2016年第4四半期に発表した市場予測では、2017年は対前年比3%減、2018年は同7%減だった。しかし、2017年第4四半期の予測では、2017年は同22%増、2018年は同4%減へと上方修正された。

品田 DRAMとNAND型フラッシュ・メモリ市場の需要が依然として強い。供給不足の状況は少なくとも2018年末まで続くだろう。 その中でも、1Gb〜8Gbと小容量のSLC(Single Level Cell)タイプのNAND型フラッシュ・メモリは、需要に供給がまったく追いついていない状況が続いている。 なぜならば、大手メーカがSLCタイプにフォーカスしていないからだ。この状況は2019年半ばまで続くだろう。

 一方、NOR型フラッシュ・メモリは一部の用途において、徐々にNAND型フラッシュ・メモリへの置き換えが進んでいくため、 市場規模は少しずつ減少していくと予想されていたが、最近の市場予測によるとこの認識は異なっている。 例えば、米IHS Markit社が2016年第4四半期に発表した内容だと、2017年は対前年比3%減、2018年は同7%減と予測されていた。 しかし、2017年第4四半期の発表だと、2017年は同22%増、2018年は同4%減と上方修正された(図1)。

 この理由は、車載機器や産業機器、スマートフォンなどでNOR型フラッシュ・メモリの需要が予想以上に高まっていることにある。 車載機器では、自動運転の導入や車載カメラの増加などで、インスツルメント・クラスタやADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先端運転支援システム)対応機器で、 車1台当たりに使用するNOR型フラッシュ・メモリ数が増えている。さらにスマートフォンでは、有機ELパネルの採用がNOR型フラッシュ・メモリの搭載数を増やす一因になっている。 画素特性ばらつきを調整する用途で使われているからだ。

車載/産業/通信機器に注力

NOR型フラッシュ・メモリでのサイプレス セミコンダクタの戦略はどのようなものか。

NOR型フラッシュ・メモリの市場予測

図2:NOR型フラッシュ・メモリの事業戦略
サイプレス セミコンダクタは、車載機器や産業機器、通信インフラ機器といった「価値(Value)ドリブン」の市場をターゲットとする。市場シェアは、台湾のMacronix社とWinbond Electronics社に次ぐ第3位である。

品田 これまでNOR型フラッシュ・メモリの市場を牽引してきたのは、パソコンやスマートフォンなどである。 例えば、パソコンではBIOSデータの格納に使われてきた。しかし、この市場は出荷数量が多いものの、単価は安い。つまり価格圧力が高く、利益率が低くなってしまう。

 そこで当社は、こうした「価格ドリブン」の市場ではなく、「価値(Value)ドリブン」の市場を狙う戦略を取っている。 具体的には、車載機器や産業機器、通信インフラ機器などの市場をターゲットとする戦略だ。

 2016年まで業界1位だった当社の市場シェアは2018年の最新データだと、約23%で業界第3位となった(図2)。 台湾のMacronix社やWinbond Electronics社を僅差で下回っている状況だが、これは「市場シェアは追わず、価値を追う」という戦略の違いが表れた結果だ。

車載機器や通信インフラ機器、産業機器に向けたNOR型フラッシュ・メモリの市場規模はどのくらいか。

NOR型フラッシュ・メモリの用途別シェア

図3:NOR型フラッシュ・メモリの用途別シェア
NOR型フラッシュ・メモリの用途は多岐にわたる。最もシェアが多いのは民生機器である。その後に、コンピュータ/ストレージ機器や、車載機器、通信機器、産業機器が続く。

品田 車載機器向けは、NOR型フラッシュ・メモリ市場全体の16%、通信インフラ機器向けは16%、産業機器向けは15%である(図3)。 合計すると47%であり、NOR型フラッシュ・メモリ市場の約半分となる。

 しかも、これらの市場の将来性は高く、車載機器向けは年率5%増、産業機器向けは1%増の成長が期待できる。 一方パソコン向けの成長率は年率4%減、民生機器向けは14%減と予想されている。

車載機器や通信インフラ機器、産業機器に照準を合わせる戦略とは、具体的にどういうものか。

10年間の長期供給を保証

図4:10年間の長期供給を保証
サイプレス セミコンダクタが販売するNOR型フラッシュ・メモリはいずれの製品ファミリとも、10年間の長期供給を保証している。

品田 ポイントは2つある。1つは長期間にわたる製品供給を保証していることだ。 当社では、10年間の長期供給を保証する「Product Longevity Program」を用意している(図4)。 例えば、2017年に供給を開始した製品は、少なくとも2027年までの供給を保証している。

産業機器などは、10年を越える部品供給を必要とするケースが少なくない。

品田 さすがに同じ製品を20年作り続けると、コストアップの要因が極めて大きくなる。 そこで、10年ごとに次世代品への切り替えをお願いすることになる。そうすることで、20年や30年といった長期供給に対応していきたい。

戦略の2つ目のポイントは。

品田 品質である。車載機器向け半導体チップの品質規格である「AEC-Q100」に準拠している。動作温度範囲は−40〜+125℃を確保した。 さらに生産部品承認プロセス(PPAP:Production Part Approval Process)への対応も可能である。加えて、不良率が低いという特徴もある。当社比だが、2017年の不良率は、2015年に比べると約1/4に低下している。

競合他社と比較するとどの程度なのか。

浜崎 当社では、競合関係にある台湾メーカの1/50の不良率を達成することを目指している。具体的な不良率は明らかにできないが、自動車メーカが求める数ppm以下は実現できている。

競合他社品と比較した際に上回っている点は、このほかにもあるのか。

浜崎 チップセット・ベンダやIPベンダ、エミュレータ・ベンダ、プログラマ・ベンダーなどからなるエコシステムのネットワーク作りで先行している点である。 実際に、さまざまなチップセット・ベンダの評価ボードに当社のNOR型フラッシュ・メモリを搭載してもらっている。 例えば、ルネサス エレクトロニクスの車載ディスプレイ用ボードや、パナソニックのデジタル・オーディオ用ボード、台湾Mediatek社のカメラ用ボード、Ambarella社の監視カメラ用ボードなどである。

4Kバイトのセクタ・サイズに対応

最新製品を紹介してほしい。

クアッドSPI対応の256MビットNOR型フラッシュ・メモリ

図5:クアッドSPI対応の256MビットNOR型フラッシュ・メモリ
4本のデータI/Oピンを持つQuad SPIメモリである。4Kバイトと小さいユニフォーム・セクタ・サイズに対応する。 電源電圧範囲は+2.7〜3.6V。パッケージは、16ピンSOIC、8ピンWSON、24ボールBGAを用意した。

品田 現在、車載機器や産業機器、通信インフラ機器に向けたNOR型フラッシュ・メモリ市場ではシリアル化が進んでいる。 つまり、外部インタフェースにSPI(Serial Peripheral Interface)を採用した製品である。 特に、中容量(256Mビット)品の需要は急増しており、米WebFeet Research社の調べでは、市場規模が2015年の1億1200万個から2021年には1億9200万個に増加する見込みだ。 年平均成長率は8%である。

 こうした市場の動きに応えるために2017年に市場投入した製品ファミリが「FL-L」である(図5)。このFL-Lは、データI/Oピンを4本持つクアッドSPI(QSPI)のNOR型フラッシュ・メモリである。

SPIを採用する機器メーカ側のメリットは何か。

品田 パラレル・インタフェースを採用する場合に比べて、ピン数を減らせることだ。このためパッケージの寸法が小さくなり、デザインの自由度を大幅に高められる。

FL-Lファミリが備える最大の特徴は何か。

品田 4Kバイトのユニフォーム・セクタ・サイズに対応したことである。 一般に、ユニフォーム・セクタ・サイズが大きいと、一度の多くのデータをまとめて消せるが、小さな単位で消すことはできない。 細かい単位で消去できることで柔軟性が高まり、メモリの使用効率を高めることができる。

4Kバイトのユニフォーム・セクタ・サイズに対応できるようになった理由は何か。従来はどうだったのか。

品田 65nmプロセスのフローティング・ゲート技術を採用することで、4Kバイトのユニフォーム・セクタ・サイズに対応することが可能なった。 当社従来品は、MirrorBit(ミラービット)技術を採用していたため,セルの構成上、対応が難しかった。当社従来品のユニフォーム・セクタ・サイズは256Kバイトである。

このほか、どのような特徴を備えているのか。

品田 大きく3つの特徴がある。1つ目は、QSPIに66MHzクロック動作のDDR(Double Data Rate)モードを用意したため、 66Mバイト/秒と高速な読み出し性能を実現したことだ。2つ目は、書き込み時間(プログラム・タイム)と消去時間(イレース・タイム)が短いことである。 書き込み時間は、256バイト当たり0.3ms(標準値)と短い。消去時間は、64Kバイト当たり270ms(標準値)である。3つ目は、AEC-Q100に準拠していることだ。

メモリ容量やパッケージの種類について教えてほしい。

「FL-L」ファミリの製品ロードマップ

図6:「FL-L」ファミリの製品ロードマップ
64Mビット品と、128Mビット品、256Mビット品を用意した。製造技術は、65nmのフローティング・ゲート技術である。

品田 容量は、64Mビット品と、128Mビット品、256Mビット品を用意した(図6)。64Mビット品は、セットトップ・ボックスやインクジェット・プリンタなどに向ける。 128Mビット品のターゲット市場は白物家電である。256Mビット品については、家庭用ゲーム機や車載機器、ネットワーク機器、Wi-Fiモジュール、フェムトセル/ピコセルなどの無線通信インフラ機器などに最適である。

 パッケージは、複数の種類を用意した。256Mビット品は、16ピンSOICと8ピンWSON、8ボールBGAの3種類のパッケージを用意した。 パッケージの実装面積は小さく、8ピンWSONと8ボールBGAは48mm2に抑えられる。一般的な256MビットのパラレルNOR型フラッシュ・メモリの実装面積は280mm2(56ピン)だったため、約1/6に削減できる計算だ。

サポート体制について教えてほしい。

浜崎 サイプレスのNORフラッシュメモリは25年の歴史があり、サポート体制は充実している。 NOR型フラッシュ・メモリ専用のエンジニアを配置しており、テスト/解析の体制も整っている。競合他社に比べて迅速に対応できるはずだ。

Quad SPI S25FL-L NORフラッシュメモリ

メーカインタビューで紹介したQuad SPI S25FL-L NORフラッシュメモリを発売中です。
車載や産機、ネットワーキングプラットフォームから民生機器に至るまで、さまざまな最先端組み込みシステム向けにハイパフォーマンス、ハイクオリティーのソリューションを提供します。

Density Device
64Mb S25FL064L
128Mb S25FL128L
256Mb S25FL256L