31. スイッチング電源(AC-DCコンバータ)の回路方式
電子機器に欠かせないスイッチング電源。かつては,鉄心にコイルを巻いたトランスを使ったリニア電源が使われていましたが,極めて重いことや変換効率が著しく低いことから,最近ではスイッチング電源が多く使われるようになっています。このスイッチング電源には,さまざまな回路方式があります。それぞれの回路方式で,コストや外形寸法,変換効率などが異なるため,用途によって使い分ける必要があります。
回路方式 | 特徴 | 回路図 |
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フライバック方式 |
スイッチング素子がオンの期間にインダクタに電力を蓄え,この電力をオフの期間に出力する回路方式。出力電力容量が大きな機種には不向きで,小容量の機種に使われています。広い入力電圧範囲を確保できるというメリットがありますが,比較的大きなピーク電流がスイッチング素子やインダクタに流れるというデメリットがあります。RCC(Ringing Choke Converter)方式は,フライバック方式の一種です。 |
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フォワード方式 |
スイッチング素子がオンの期間に,電力を一次側から二次側へと伝達させる回路方式。回路構成が単純で,安定な制御を実現できるため,多くのスイッチング電源に採用されています。出力電力容量が小さな機種はもちろん,比較的大きな機種にも使われています。高い電力変換効率が得られるものの,MHz帯の雑音発生量が多いという欠点があります。 |
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プッシュプル方式 |
スイッチング素子を二つ使用し,二つのトランスを交互に使用する回路方式。トランスの利用効率が高まるため,出力電力容量が比較的大きな機種に適用可能です。ただし、トランスの偏磁に注意する必要があります。 |
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ハーフブリッジ方式 |
回路動作はプッシュプル方式と同じですが,トランスに印加される電圧が入力電圧の半分と低いため,スイッチング素子に耐圧が低い品種が使えるというメリットがあります。出力電力容量が大きな機種に適用可能で,1kW程度までの機種に使われています。 |
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フルブリッジ方式 |
ハーフブリッジ方式の入力部をフルブリッジに変更した回路方式。ハーフブリッジ方式と同様に,耐圧が低いスイッチング素子が使えるというメリットがありますが,ハーフブリッジ方式に比べて回路構成や制御が複雑になるというデメリットがあります。高い電力変換効率が得られます。出力電力容量が大きな電源に適用されています。 |