39. ダイオードの基本
ダイオードの基本動作
ダイオードとは、電圧をある一定方向に印加したときだけに電流が流れる整流作用を有する2端子の半導体デバイスです。ダイオードにはさまざまな種類があります。例えば、p型の半導体とn型の半導体を接合させたpn接合ダイオードや、半導体と金属を接合させたショットキ・バリア・ダイオード、トンネル効果による降伏現象を利用して比較的低い逆方向電圧で電流が流れ出すツェナー・ダイオード(定電圧ダイオード)、p型とn型の間にi(intrinsic)型を挟み少数キャリアの蓄積効果を高めて逆回復時間を短くしたpin接合ダイオードなどです。ここでは、最も基本的なpn接合ダイオードを取り上げ、基本構造と動作特性を説明します。
基本構造
pn接合ダイオードは、p型半導体とn型半導体を滑らかに接合した構造を採用しています。pn接合部では、互いの電子と正孔が打ち消し合い、多数キャリアが不足した空乏層が形成されます。この空乏層内では、n型半導体側は正(+)に、p型半導体側は負(ー)に帯電しているため、内部に電界が発生しています。つまり、空乏層の両端には電位差(拡散電位)が発生しているわけです。ただし、この電位差と釣り合わせようと内部でキャリアが再結合するため、この状態では両端電圧はゼロ(0)になります。
<半導体のpn接合と?oンド構造の模式図>
動作特性:順方向バイアス
アノード(陽極)側に正電圧、カソード(陰極)側に負電圧を印加することを「順方向バイアスをかける」と言います。これを実行すると、n型半導体に電子を、p型半導体に正孔を注入することになります。この結果、多数キャリアが過剰となるため、空乏層は縮小・消滅し、キャリアは接合部付近で次々に結びついて消滅(再結合)します。ダイオード全体でみると、この動作は、電子がカソードからアノードに流れる、すなわち電流がアノードからカソードに流れていることになります。順方向バイアスをかけている場合、バイアス電圧の上昇に伴い、電流は急激に増加します。さらに電子と正孔の再結合に伴って、これらが持っていたエネルギーが熱、もしくは光として放出されます。なお、順方向電流を流すために必要な電圧を順方向電圧降下と呼びます。
<順方向バイアス時のpn接合ダイオード>
動作特性:逆方向バイアス
アノード(陽極)側に負電圧を印加することを「逆方向バイアスをかける」と言います。これを実行すると、n型半導体に正孔を、p型半導体に電子を注入することになるため、それぞれの領域で多数キャリアが不足します。すると、接合部付近の空乏層がさらに大きくなり、内部の電界が強まるため拡散電位が上昇します。この拡散電位が外部から印加された電圧を打ち消すように働くため、逆方向には電流が流れにくくなります。実際のダイオードでは、逆バイアスをかけた状態でも、ごくわずかに逆方向電流が流れます。この電流を漏れ電流、もしくはドリフト電流と呼びます。さらに逆方向バイアスを高めていくと、ツェナー降伏やなだれ降伏が発生して、急激に電流が流れるようになります。この降伏現象が始める電圧を(逆方向)降伏電圧、もしくは(逆方向)ブレークダウン電圧と呼びます。また、降伏現象によって急激に逆方向電流が増加している領域を降伏領域(ブレークダウン領域)と呼びます。ブレークダウン領域では、電流変化に比べて、電圧変化が小さくなります。こうした動作を積極的に使うことで低電圧源として利用するのがツェナー・ダイオードです。
<逆方向バイアス時のpn接合ダイオード>
ダイオードの最大定格
尖頭順方向電流 平均整流電流 過渡尖頭逆方向電力 許容電力
過渡尖頭逆方向電圧 | ![]() |
過渡的に、逆方向に印加できる最大電圧 |
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繰り返し尖頭逆方向電圧 | ![]() |
繰り返し逆方向に印加できる最大電圧 |
逆方向電圧 | ![]() |
連続的に印加できる逆方向電圧の最大許容値 |
サージ電流 | ![]() |
過渡的に順方向に加えることができる最大電流 |
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繰り返し印加できる順方向電流の最大値 |
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抵抗負荷の半波整流回路で取り出せる平均整流電流の最大値 |
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ダイオードの逆方向で過渡的に消費させることができる最大電力。アバランシェ・ダイオードなどで規定される |
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ダイオードで繰り返し消費させることができる最大許容電力値 |
電気的特性
順方向電圧 逆方向電流 逆方向電圧 端子間容量 逆回復時間
順方向電流 | ![]() |
規定の順方向電圧 |
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規定の順方向電流 |
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規定の逆方向電圧 |
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![]() |
規定の順方向電流 |
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逆方向バイアスをかけたときの端子間静電容量 |
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順方向に通電している状態で、急に逆方向に電圧を印加したときに流れる逆方向電流 |