57. アナログICの主な用語
アナログICを使いこなすには、さまざまな仕様を読み解く必要があります。
ここではオペアンプICとコンパレータIC、A/DコンバータIC, D/AコンバータIC、電源用ICを取り上げ、それぞれに関連する仕様や用語を解説します。
IC種類 | 用語 | 説明 |
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オペアンプIC |
入力オフセット電圧 |
出力電圧を0V にするために必要な入力端子間の差電圧です。この差電圧が小さいほど性能が高く、理想は0Vです。 |
入力オフセット電流 |
出力電圧が0V のときに、それぞれの入力端子に流入、もしくは入力端子から流出する電流の差です。 |
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入力バイアス電流 |
オペアンプを正常に動作させるために必要な、入力端子に流入、もしくは入力端子から流出する電流です。 正電源側と負電源側の電流の平均値で、この値が小さいほど高い性能と言えます。 |
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同相入力電圧範囲 |
正電源側(+Vin)と負電源側(-Vin)に同相で入力できる電圧の範囲です。 |
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開放電圧利得 |
入力端子間に印加した電圧が、どの程度増幅されて出力されるかを表現した直流電圧比です。 一般に、dB( デシベル)を使って表現します。オープン・ループ・ゲインや開ループ電圧利得という呼称もあります。 |
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入力換算電圧 |
オペアンプで発生した雑音を入力電圧で表現した値です。 |
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同相入力電圧除去比(CMRR) |
入力に混入した同相雑音が出力信号に与える影響をどの程度取り除くことができるかを示した値です。 dB( デシベル)で表現し、数字が大きいほど、同相雑音の影響を受けません。 |
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電源電圧変動除去比(PSRR) |
電源電圧の変動が出力信号に与える影響をどの程度取り除くことができるかを示した値です。 dB( デシベル)で表現し、数字が大きいほど、電源電圧変動の影響を受けません。 |
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スルー・レート |
立ち上がり時間が短いパルス波形を入力すると、出力波形の立ち上がりが遅れて、傾きが発生します。 この傾きの変化の割合をスルー・レートと呼びます。時間当たりの出力電圧の変化量で表現し、単位はV/msなどになります。 |
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セトリング時間 |
ステップ入力を与えたときに、出力が目標値の許容範囲に収まるまでの時間です。 |
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利得帯域幅 |
利得と帯域幅の積です。GB積とも呼ばれます。オペアンプの性能を表す仕様の1つです。 |
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レール・ツー・レール |
出力信号を正負の電源電圧まで振ることができる仕様を指します。電源電圧をレールに例えているため、この呼び名が付きまし た。なお、この呼び名は米モトローラ社の商標のため、「フルスイング」などの別の呼び名もあります。 |
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コンパレータIC |
応答時間 |
入力信号が基準電圧(Vref )を超えてから、出力信号の振幅が50%に達するまでの時間です。 |
A/D, D/AコンバータIC |
分解能 |
アナログ信号をデジタル信号で表現する際の最小値を決める仕様です。一般に6~24ビットのコンバータが入手可能で、 ビット数が大きければ大きいほど、精度が高くなります。 |
サンプリングレート(変換速度) |
A/D, D/Aコンバータが1秒間に、アナログ信号からデジタル信号へ、もしくはデジタル信号からアナログ信号に変換できる最大の回数です。 |
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信号対雑音比(SN比) |
直流からナイキスト周波数までの帯域において、入力信号以外の全スペクトル成分の実効(rms)値と、 入力信号の実効(rms)値の比をdBで表した値です。 |
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キャリア対雑音比(CN比) |
変調キャリアを基準として測定した信号対雑音比(SN比)です。 |
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ダイナミック・レンジ |
ある信号処理系で扱うことができる最小出力信号と最大出力信号の比です。一般にdB(デシベル)で表現します。 |
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積分非直線性誤差(INL) |
アナログ入力とアナログ出力の関係において、理想値と実測値に存在する最大偏差に相当します。 |
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微分非直線性誤差(DNL) |
1LSBの変化を与えたときに得られる実際のコード幅との差分です。D/Aコンバータの場合は、1LSBだけ大きい、 もしくは小さいデジタル・コードを入力したときに、実際に得られる変化量の偏差に相当します。 一方、A/Dコンバータの場合はその逆となり、アナログ・コードでの1LSB分の変化に対する出力の変化量の偏差となります。 |
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有効ビット数(ENOB) |
計算で求められる理想的な信号対雑音比(SN比)ではなく、実測したSN比を基に求めたビット数です。 実際には、さまざまな雑音が発生しているため、コンバータの分解能(ビット数)よりも、ENOBは小さな値になります。 次式で求めることができます。 ENOB =(実測したSN比 - 1.76) × 6.02(ビット) |
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信号/ (雑音+歪み)比(SINAD) |
直流からナイキスト周波数までの雑音の実効(rms)値に対する、正弦波入力、もしくは正弦波出力の実効(rms)値の比です。 |
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量子化雑音 |
量子化処理時に発生する誤差によって生じる雑音です。 |
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オーバーサンプリング |
A/Dコンバータにおいて、ナイキスト理論で決まる最小周波数を超えるサンプリング速度で入力周波数をサンプリングする手法です。 オーバーサンプリングの程度が大きくなればなるほど、SN比の改善効果が高まります。2倍のオーバーサンプリングでは、 3dBのSN比改善効果が得られます。 |
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電源用IC |
スイッチング・レギュレータ |
パワーMOSFETなどの半導体スイッチをオン/オフさせることで、入力電力から取得するエネルギ量を調整し、出力電圧を目標 となる値に調整する回路(IC)です。入力電圧をそれよりも低い電圧に変換して出力する「降圧型( バック型)」や、高い電圧に変 換して出力する「昇圧型( ブースト型)」、高い電圧への変換と低い電圧への変換の両方に対応できる「昇降圧型」、入力電圧の極 性を反転させて出力する「反転型(インバート型)」などがあります。 |
LDOレギュレータ |
LDOは、Low Drop Outの略です。リニア・レギュレータの中で、入力電圧と出力電圧の差が小さい品種のことです。 |
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ライン・レギュレーション |
入力電圧(ライン)の変動が、出力電圧にどの程度の影響を与えるか(変動幅)を示す仕様です。この値が小さければ小さいほど、 性能が高いと言えます。 |
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ロード・レギュレーション |
負荷電流( ロード)の変動が、出力電圧にどの程度の影響を与えるか(変動幅)を示す仕様です。この値が小さければ小さいほど、 性能が高いと言えます。 |
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変換効率 |
入力された電力が、どの程度出力されるかを示す仕様です。以下の式で求められます。 変換効率(%)=(出力電力/入力有効電力)×100 |
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PWM/PFM制御 |
いずれも、スイッチング・レギュレータの制御方法です。一般にスイッチング・レギュレータでは、 半導体スイッチにパルス信号を与えてオン/オフさせます。このオン/オフ期間の制御にパルス幅を利用するのがPWM(Pulse Width Modulation)制御、 パルス周波数を利用するのがPFM(Pulse Frequency Modulation)制御です。 |