60.無線通信

パソコンや携帯型電子機器、民生用電子機器などに向けた無線通信技術は複数存在します。
それぞれ使用する周波数帯域が違う上に、伝送速度や伝送距離が異なります。
このため、用途に違いがあります。ここでは代表的な無線通信技術を取り上げ、それぞれの特徴をまとめました。

無線LAN

無線LANとは、パソコンとその周辺機器との接続に向けた無線通信規格。IEEEで規格化されました。「Wi-Fi(ワイ・ファイ)」と呼ばれることもあります。規格には、2.4GHz帯を利用するIEEE802.11b/gと5GHz帯を利用するIEEE802.11a、2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使うIEEE802.11nがあります。データ伝送速度は、802.11bでは最大22Mビット/秒、802.11aと802.11gでは最大54Mビット/秒、802.11nでは最大600Mビット/秒が得られます。

WiMAX

WiMAXとは、ADSLや光ファイバ、ケーブル・テレビなどの敷設が難しい地域において、有線通信施設と家庭までの「ラストワンマイル」を接続する用途に向けた無線通信規格。「ワイマックス」と発音します。利用可能な周波数帯域は2G~11GHzです。無線LANとの最大の違いは、通信距離が長いことです。WiMAXの規格は二つあり、一つは固定通信に向けたIEEE802.16-2004。もう一つは、移動体での使用を可能にしたIEEE802.16e(Mobile WiMAX)です。データ伝送速度は、IEEE802.16-2004では最大10kmの範囲で最大74.81Mビット/秒、IEEE802.16eでは最大3kmの範囲で最大21Mビット/秒が得られます。

ZigBee

ZigBeeとは、消費電力が低いことが特徴の短距離無線通信規格。ビルや工場などの管理に用いるセンサー・ネットワークや、電灯や空調機器、セキュリティ機器などの遠隔制御などが主な用途です。2.4GHzのほか、900MHz帯と800MHz帯を利用できます。物理層などの電気的な規格はIEEE802.15.4で規定されており、その上に乗せるプロトコルなどは業界団体のZigBee Allianceが策定しました。データ伝送速度は最大で250kビット/秒で、通信距離は最大で300mです。

Bluetooth

Bluetoothは、パソコンや携帯電話機と、それらの周辺機器を接続する用途に向けた開発された2.4GHz利用の近距離無線通信規格。マウスやキーボード、ヘッドセットなどに搭載されています。当初の規格は、スウェーデンEricsson社とフィンランドNokia社、東芝、米IBM 社、米Intel社が中心になって策定されました。その後は、業界団体のBluetooth SIGにその場が移されています。データ伝送速度は、Bluetooth2.1+EDR規格で最大3Mビット/秒です。ただし、2009年4月に策定された「Bluetooth3.0+HS」規格では、2.4GHzのほか5GHzの使用を可能にし、データ伝送速度を最大で24Mビット/秒に高めています。

WirelessHD

WirelessHDとは、60GHzのミリ波を利用した高速無線通信規格。家庭における映像伝送を主な用途に掲げており、当初の規格では最大7Gビット/秒程度でしたが、次期規格で10G~28Gビット/秒と高められる予定です。これが実現されれば、3Dテレビの映像や4K2K(4000×2000画素)テレビの映像も非圧縮で伝送できるようになります。仕様を策定する業界団体は2006年に立ち上げられており、当初の参加企業はパナソニック(当時は松下電器産業)、NEC、ソニー、東芝、韓国LG Electronics社、韓国Samsung Electronics社、米SiBEAMでした。

NFC

NFC (Near Field Communication)とは、13.56MHzを利用する短距離無線通信規格。ソニーとオランダPhilips社が開発しました。通信距離は10cm程度と短く、データ伝送速度は106kビット/秒と212kビット/秒、424kビット/秒が用意されており、この中から一つを選べます。ソニーの非接触ICカード「FeliCa」とPhilips社の「Mifare」において、NFC規格が物理層に採用されています。

LTE

LTE (Long Term Evolution)とは、第3.9世代携帯電話(3.9G)と呼ばれる新しい携帯電話規格。第3世代携帯電話(3G)の規格で使用している周波数帯域を使用し、第4世代携帯電話(4G)の規格で採用する技術を近いものを採用するため、3.9Gと呼ばれています。標準化作業を担当しているのは業界団体の「3GPP(Third Generation Partnership Project)」です。ピークにおける下りのデータ伝送速度は最大100Mビット/秒以上、上りは最大50Mビット/秒が得られる見込みです。日本国内では2010年末からサービス運用が始まる予定です。

IrDA

IrDA(Infrared Data Association)とは、赤外光を利用した光無線通信規格。携帯電話機や家電用リモコン、パソコンなどに搭載されています。1994年に規格化された「SIR」仕様ではデータ伝送速度は最大115.2kビット/秒でしたが、その後高速化が進んでおり、「FIR」仕様では最大4Mビット/秒に、「UFIR」仕様では最大100Mビット/秒に高まりました。そして策定中の「Giga-IR」仕様では、最大1Gビット/秒に高まる予定です。