68. 水晶デバイスの種類と特長

水晶は、その物理的な特性を活かしさまざまなデバイスに利用されています。
以下の代表的なデバイスとその概要を示します。

機能種 デバイス名 特長

振動子/共振子

音叉型水晶振動子

音叉型に加工した水晶片を用いた振動子です。振動周波数は主に32.768kHzで、時計などで使われています。

AT型水晶振動子

水晶結晶の切断方位の1つであるATカットで切り出した水晶片を用いた振動子です。水晶片の厚さによって振動周波数が異なり、数MHz~数百MHzの周波数範囲に対応できます。

SAW共振子

弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用した共振子です。水晶基板上にくし形電極(IDT:InterdigitalTransducer)を設け、表面を振動させることでタイミング信号を生成します。 数百MHz~数GHzと高い周波数範囲に対応できます。

発振器

水晶発振器
(SPXO:Simple Packaged X’tal Oscillator)

基本的な水晶発振器です。水晶片と発振ICで構成されています。民生用電子機器やパソコン、オフィス機器などで使われています。

電圧制御型水晶発振器
(VCXO:Voltage Controlled X’tal Oscillator)

外部から入力する電圧によって発振周波数を変えることができる水晶発振器です。民生用電子機器や携帯電話機などで使われています。

温度補償回路付水晶発振器
(TCXO:Temperature Compensated X’tal Oscillator)

温度補償回路を内蔵することで、温度変化による発振周波数の変化を抑えた水晶発振器です。携帯電話機やGPS受信機などで使われています。

電圧制御型温度補償回路付水晶発振器
(VCTCXO: VoltageControlled TemperatureCompensated X’ral Oscillator)

外部から入力する電圧によって発振周波数を変えられる機能を備えた温度補償回路付水晶発振器です。携帯電話機やGPS受信機などで使われています。

恒温槽付水晶発振器
(OCXO:Oven Controlled X’tal Oscillator)

恒温槽の中に収めることで、動作温度を一定に保ち、発振周波数変化を極めて小さな値に抑えた水晶発振器です。携帯電話機の基地局などで使われています。

フィルタ

ディスクリート水晶フィルタ

水晶振動子とインダクタ、コンデンサといったディスクリート部品を1つのパッケージに収めたフィルタです。主に通信機器で使われています。

モノリシック水晶フィルタ
(MCF:Monolithic Crystal Filter)

水晶基板上に複数の電極を設け、それぞれの電極間の音響的な結合によって発生した共振現象を利用するフィルタです。無線通信機器の中間周波数フィルタなどに使われています。

SAWフィルタ

弾性表面波(SAW)を利用したフィルタです。水晶基板上に入力用と出力用のくし形電極(IDT)を作り込み、この電極間で信号をやり取りする際、水晶材料の特性や電極の形状などで決まる共振条件に合致しない成分は出力用電極に到達しないことを利用したフィルタです。民生用電子機器や無線通信機器などで使われています。

光学デバイス

光学ローパス・フィルタ(複屈折板)

水晶材料が備える複屈折性を利用したフィルタです。デジタル・カメラなどでモアレの除去に使われています。

位相板(波長板)

直線偏光の入射光を円偏光の光に変換したり、偏光方向が90度異なる直線偏光の光に変換したりする役割を果たします。DVDプレーヤなどの光ピックアップなどに使われています。