84. 電池の種類
携帯電話機やデジタル・カメラ、ノート・パソコン、電動工具、玩具、時計などの駆動に使われている電池。
電池は、1次電池と2次電池(充電池)に大きく分けることができます。
さらに、1次電池と2次電池はいずれも、正極と負極の組み合わせの違いによって、さまざまな種類があります。
電池の種類によって性能や特性が異なるため、用途によって最適な電池を選択しなければなりません。
分類 | 電池の種類 | 公称電圧 | 特色 |
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1次電池 |
マンガン乾電池 |
1.5V |
正極に二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に塩化亜鉛も使用した1次電池。古くから使われている最も一般的な1次電池です。 放電開始電圧は1.6V、放電終止電圧は0.85~0.9Vです。懐中電灯や玩具、リモコン、時計といった消費電流が比較的小さい機器に向いています。 |
アルカリ・マンガン乾電池 |
1.5V |
正極に二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に水酸化カリウム、もしくは水酸化ナトリウムを使用した1次電池。 エネルギ容量は、同サイズのマンガン電池の約2倍と大きいことが特長です。 このため、消費電流が比較的大きな電子機器に向いています。フラッシュの駆動やモーターの駆動のほか、 デジタル・カメラなどに使われています。放電開始電圧は1.6V、放電終止電圧は0.8~1.0Vです。 |
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オキシ水酸化 |
1.5V |
正極にオキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に水酸化カリウムを使用した1次電池。 パナソニック(当時は松下電器産業)が2004年に「オキシライド乾電池」の名称で発売しました。 同サイズのアルカリ乾電池に比べてエネルギ容量が1.5~2倍と大きいことが特長です。 デジタル・カメラといった消費電流が大きな機器に向いています。 放電開始電圧は1.7Vとアルカリ乾電池に比べて若干高く、放電終止電圧は約1.0Vです。 |
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リチウム電池 |
3.0V |
正極に二酸化マンガン、負極にリチウム、電解液に有機溶液を使った1次電池。 同じサイズのマンガン乾電池と比較するとエネルギ容量が約10倍と大きいことが特長です。 さらにイオン化傾向が高いリチウムを負極に用いているため、3.0Vと高い公称電圧が得られます。 初期電圧と終止電圧の電圧差が小さく、自己放電率が低いため、パソコンや電子手帳、時計などのバックアップ用電源として使われています。 |
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アルカリ・ボタン電池 |
1.5V |
アルカリ乾電池と同じ電池構成を採用したボタン電池です。1979年に銀の価格が高騰したことを受けて、 酸化銀電池の代替品として普及しました。価格が低いため、電子玩具や電卓などの電源として使われています。 |
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酸化銀電池 |
1.55V |
正極に酸化銀、負極にゲル化亜鉛、電解液にさせた水酸化カリウム、もしくは水酸化ナトリウムを使用した1次電池。 放電特性が優れており、放電末期まで初期電圧に近い値を確保できるという特長があります。 さらに体積エネルギ密度はアルカリ乾電池の約2倍と高いですが、 銀も使用するため価格が比較的高いという欠点があります。厚さが2mm以下と薄い品種が用意されており、主に腕時計などで使われています。 |
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空気亜鉛電池 |
1.4V |
正極に空気中の酸素、負極に亜鉛、電解液に水酸化カリウムを使用した1次電池です。 環境に対する悪影響への懸念のため製造中止となった水銀電池に代わって、補聴器などに使われています。 酸素の侵入を防ぐために正極に貼られているシールをはがして使用します。一度、シールをはがしてしまうと化学反応が進行してしまうため、再度シールを貼っても保存することはできません。 |
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2次電池 |
ニッケル・カドミウム電池 |
1.2V |
正極に水酸化ニッケル、負極に水酸化カドミウム、電解液に水酸化カリウム水溶液を使用した2次電池です。 放電開始電圧は約1.4V、放電終止電圧は約1.0Vです。内部抵抗が比較的低いため、大電流出力が可能です。 具体的には連続動作時に3C、瞬時動作時に10Cの放電が可能です。 このため、ラジコン自動車や電動工具といった大きな電力が必要な機器に向いています。ただし、 エネルギ密度は同じ2次電池であるニッケル水素電池やリチウム・イオン電池に比べて低く、 メモリー効果(完全に放電させず継ぎ足し充電を行っていると、エネルギが残っているにもかかわらず放電電圧が低下してしまう現象)が発生するといった欠点があります。 |
ニッケル水素電池 |
1.2V |
正極に水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウム水溶液を使用した2次電池です。 同じサイズのニッケル・カドミウム電池と比べると約2.5倍のエネルギ容量が得られます。 放電開始電圧は約1.4V、放電終止電圧は約0.9Vで、ニッケル・カドミウム電池とほど同じ放電特性を有しています。 このため、ニッケル・カドミウム電池を置き換えるかたちで普及が進みました。かつては、 携帯電話機などで採用されていましたが、現在ではリチウム・イオン電池に取って代わられつつあります。 現在、ニッケル水素電池は、デジタル・カメラや、電動工具、ラジコン自動車、ハイブリッド車などで使われています。 |
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リチウム・イオン電池 |
3.7V |
正極にコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなどのリチウム合金、負極にハード・カーボンやグラファイトなどの炭素材料、 電解液に有機溶媒と六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩を使用した2次電池です。 最近では、正極にニッケル酸リチウムや鉄系材料、負極にスズ酸化物を使う電池構成も登場しています。 特長は、放電電圧とエネルギ密度が高い点にあります。放電開始電圧は4.1~4.3V、放電終止電圧は約2.7Vです。 同じサイズのニッケル水素電池と比べると2~3倍のエネルギ容量が得られます。 しかも、自己放電率が低く、メモリー効果がないといった長所も兼ね備えています。このため、 携帯電話機やデジタル・カメラ、ビデオ・カメラ、ノート・パソコンなどに広く普及しています。最近では、電気自動車やハイブリッド車への適用に向けた開発が積極的に進められています。 |
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リチウム・ポリマー電池 |
3.7V |
リチウム・イオン電池の電解液を高分子ゲルに置き換えた2次電池。リチウム・イオン電池の一種です。 アルミ箔で封止することで極めて薄い電池が実現できます。薄型化が求められるノート・パソコンや携帯電話機、携帯型メディア・プレーヤなどで使われています。 |
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鉛蓄電池 |
2.0V |
正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を用いた2次電池です。主に自動車に搭載する「バッテリ(2次電池)」として使われています。公称電圧が約2.0Vと高く、安価という特長がありますが、エネルギ密度はニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池などと比べると劣ります。 |
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燃料電池 |
- |
水素などの燃料と、酸素などの酸化剤を外部から供給することで、両者を反応させて電力を得る化学電池です。 1次電池や2次電池とは機能が異なります。現在、携帯型電子機器や自動車、家庭用分散発電機などへの適用に向けて開発が進められています。 |
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太陽電池 |
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光起電力効果を利用して、光エネルギを直接電力に変換する物理電池です。これも燃料電池と同様に、 1次電池や2次電池とは機能が異なります。シリコン材料が主に使われており、シリコンの結晶状態の違いで、 単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファス・シリコン太陽電池などがあります。 このほか、住宅用太陽光発電システムに向けたCIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレン)太陽電池や、 宇宙用など高い変換効率が求められる用途に向けたガリウムひ素太陽電池などがあります。 |