~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向をお届けします。

海外での豊富な実績を誇る圧力センサ、国内の医療機器市場の攻略を目指す

 年間の売上高が370億米ドルを超える世界的な大企業である米ハネウェル(Honeywell)社。同社が扱っている製品分野は幅広い。航空宇宙機器や輸送機器、ビル管理システム、工業用プロセス機器、携帯型スキャナ機器、化学素材など多岐に渡る。
そうした製品の中に、圧力センサやエアフロー・センサ、磁気センサ、温度センサ、電流センサ、スイッチなどの電子部品もある。航空宇宙機器、産業機械、医療機器、輸送機器などに採用されている。これらの市場における同社の市場シェアは高いという。

 今回は、同社の日本法人であるハネウェルジャパンのオートメーション・アンド・コントロールソリューションズ部門で、センシング&コントロール営業部長を務める秦哲夫(しんの・てつお)氏と、シニアフィールドアプリケーションエンジニア(FAE)を務める足立裕樹(あだち・ゆうき)氏に、同社のセンサ製品の特徴や、市場戦略、日本における今後の販売活動などについて聞いた。(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

オートメーション・アンド・コントロールソリューションズ部門では、どのような製品を扱っているのか。

左から今回インタビューを受けて頂いた足立氏、秦氏、泊氏
(Honeywell Japan オフィス受付にて)

 エアフロー・センサや圧力センサ、ホール・センサ、AMR(Anisotropic-Magneto-Resistive)センサ、電流センサ、スイッチ、圧力トランスデューサ、ヒーターなどがある。

これらの製品の中で、現在特に力を入れているのは何か。

図1:オンボード圧力センサ

 オンボードの圧力センサだ(図1)。オンボードとは、プリント基板に実装するタイプを意味する。

製品は大きく分けて2種類ある。1つは「26PCシリーズ」。
低圧(7k〜105kPa)〜中圧(105k〜1.75Mpa)を圧力域に対応するセンサだ。もう1つは、「TruStablilityシリーズ」である。微圧(7kPa未満) ~中圧(105k~1.75Mpa)の圧力域を検出対象にする。
このシリーズには細かく分けると2種類あり、一方が「TruStablility HSCシリーズ」で、もう一方が「TruStablility SSCシリーズ」である。
前者は高性能品という位置付けだ。リニアリティや繰り返し性、再現性、温度変化、姿勢特性など、すべての要因を含めた検出誤差である「トータル・エラー・バンド(TEB)」は±1%と小さい。
後者は、スタンダード品という位置付けで、トータル・エラー・バンドは±2%である。
なお、26PCシリーズは、アナログ信号出力に対応する。TruStablilityシリーズについては、アナログ信号出力のほか、デジタル信号出力にも対応している。

シリコン基板内部に作り込む

使用方法を具体的に説明してほしい。

圧力センサの特徴について詳しく示す(秦氏)

 当社の圧力センサは、検出素子を収めるハウジングとポート、プリント基板に実装するパッケージなどから成る。圧力を測定したい液体や気体が流れるチューブをポートに接続する。すると、液体や気体が検出素子に流れ込む。その際に、圧力を測定するという仕組みである。ポートは2つ用意しており、両ポートに流れ込む液体や気体の差圧や、絶対圧(絶対真空を基準にした圧力)、ゲージ圧(周囲の気圧を基準にした圧力)などを測定できる。

圧力の検出原理を教えてほしい。

Honeywell S&C製品

 シリコン(Si)基板に作り込んだ4個の抵抗素子から成るホイートストン・ブリッジを使って検出する方法である。圧力がかかるとシリコン基板が歪む。その結果、抵抗素子の抵抗値が変化する。その変化をホイートストン・ブリッジで検出することで、圧力を測定する方法である。
アイデア自体は30年前からある古いものだ。しかし、最近の製品では、従来に比べると改良が施してある。

足立 従来は、シリコン基板に表面に薄膜を形成して抵抗素子を作り込んでいた。表面を保護膜で覆っても、接続用のボンディング・ワイヤーは露出してしまう。これでは、結露が発生する危険性がある用途や、気体や液体は測定できなかった。
20PCシリーズ(24PC/26PC)の構造は、イオン注入方式で、シリコン基板の内部に抵抗素 子を作り込むというものだ。こ の方法であれば、ボンディング・ワイヤーがシリコン基板の表面に露出しない。このため、結露が発生しても問題はな い。腐食性のある気体や液体の圧力測定にも使えるようになった。

この検出方法を採用した圧力センサを製品化しているのはハネウェル社だけか。

 その通りだ。前述のように約30年前に開発された技術だが、特許に守られてきたことなどの理由から、当社しか製造していない。

競合他社は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造した圧力センサを製品化している。
MEMS技術を採用する予定はあるのか。

 現時点では、採用の予定はない。

リーマン・ショックがきっかけに

ターゲットとなる圧力センサの用途は何か。

 一般産業機器や医療機器が主なターゲットとなる。現在では特に、医療機器市場に力を入れている。具体的には、血圧計や、気腹装置(内視鏡手術時に炭酸ガスを送り込み腹腔内を膨らませる装置)、麻酔器、酸素濃縮器、腎臓透析器、点滴用注入ポンプなどだ。

医療機器に注力しはじめたのはいつ頃のことか。

 2008年〜2009年にかけて起こったリーマン・ショックがきっかけだ。リーマン・ショックで世界の各地域の売り上げが減少した。ところが、日本だけ落ち込み幅が大きい。その理由は何か。分析してみると、売上高全体に占める医療機器の割合が日本だけ低かったことが分かった。医療機器の売り上げは、あまり景気に左右されないからだ。それ以降、日本での医療機器市場への取り組みを強化した。

国内の医療機器メーカーの反応はどうか。

進化するHoneywellの圧力センサについて説明(足立氏)

 非常に良好だ。当社は、海外の医療機器メーカーに数多くの圧力センサなどを納入している。いずれの海外メーカーも業界の最先端を走っている。そうした海外メーカーがどのように圧力センサなどを活用しているのか。その情報を収集することも、当社の製品を検討する一つの理由になっているようだ。当社も、そうした国内メーカーの声に応えるために、海外メーカーのアプリケーション例をまとめた冊子を用意している。

国内の医療機器メーカーの声を製品に反映させる仕組みはあるのか。

 基本的に当社の製品は顧客の声をきっかけに開発されたものが多い。例えば、3.3Vで駆動できる圧力センサや、A/Dコンバータ内蔵の圧力センサがその一例である。
今後は、さらに顧客支援を強化すべく、フィールド・アプリケーション・エンジニア(FAE)と品質保証担当エンジニアを配置している。これは、「日本は重要な市場だ」と本社側が認識している証拠だ。

足立 当社には、顧客の要求を製品に取り込むか否かを決定する独自の承認プロセスが用意されている。このプロセスに顧客の声を登録すると、採算性や市場性、技術難易度などを考慮して採用するかどうかが決まる。この承認プロセスを利用すれば、国内の顧客の声をダイレクトに生かせるわけだ。

売り上げの目標は。

 具体的な数字は明らかにできない。

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