~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
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重要度高まるディスクリート半導体、コスト競争力と技術力でシェア拡大へ

 微細加工技術の進化によって、集積度が高まり続ける半導体チップ。とかく技術者や設計者の興味は、高集積の半導体チップに集まりがちだ。しかし、そうした中にあって、半導体の基本素子であり、集積度があまり高くないトランジスタやダイオードといったディスクリート半導体チップも、依然として市場規模を伸ばし続けている。いまもなおディスクリート半導体チップは、電子機器を設計/開発する技術者にとって、極めて重要なビルディング・ブロックであると言って過言ではない。

 オランダのNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)社は、1953年からディスクリート半導体チップの製造を手がけてきた老舗メーカーだ。1953年以降、ディスクリート半導体チップ市場の牽引役を果たしてきており、現在も世界的なトップ・メーカーの1社だ。今回は、NXPセミコンダクターズジャパンのスタンダード・プロダクト部門において部長を務める北野淳(きたの・じゅん)氏に、ディスクリート半導体チップ市場の現状や、同市場におけるNXPセミコンダクターズの位置付け、同社のマーケティング戦略や技術戦略などについて聞いた(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

NXPセミコンダクターズは、マイコンや無線通信チップ、電源チップなど、幅広い半導体チップを手がけている。
その中にあって、ディスクリート半導体チップは、どのような位置づけになのか。

図1 NXPセミコンダクターズのビジネス領域

北野 当社は、2つのビジネス領域を設定している(図1)。「ハイパフォーマンス・ミックスドシグナル」と「スタンダード・プロダクト」だ。前者のビジネス領域には、電子パスポート用チップや、スマートカード用チップ、マイコン、無線通信チップ、電源制御チップ、車載チップなどの製品が含まれる。いずれも、集積度が比較的高い半導体チップだ。

 後者のビジネス領域は、いわゆるディスクリート半導体チップを中心に構成されており、大きく3つの製品群がある。1つは、「汎用ディスクリート」である。代表的な製品は、小信号トランジスタ/ダイオードやESD保護素子、EMIフィルタ、中電力トランジスタ/ダイオードなどである。2つめは「パワーMOSFET」である。具体的には、車載向けパワーMOSFETや標準用途向けパワーMOSFET、ハイサイド・スイッチなどが含まれる。3つめは「標準ロジック」である。

コスト競争力や技術力で業界をリード

スタンダード・プロダクト領域におけるNXPセミコンダクターズの強みは何か。

スタンダード・プロダクト部門 部長 北野淳氏

北野 当社は、今から60年以上も前の1953年にスタンダード・プロダクトのビジネスに着手した。それ以降ずっと、開発から製造までを手がける垂直統合型メーカーとして活動している。現在では、汎用ディスリートの前工程は独ハンブルグに、パワーMOSFETの前工程は英マンチェスターに、標準ロジックの前工程はオランダのナインメーゲンにあり、それぞれの後工程はアジア地域にある。生産能力は、年間700億個に達する。こうしたサプライチェーンは長い年月を掛けて最適化してきており、コスト効率は非常に高い。しかも、製品ラインナップは1万品種を超えおり、品ぞろえは極めて豊富だ。

信頼性や技術力などについてはどうか。

北野 信頼性や技術力も、世界トップレベルだと自負している。標準ロジックを含むスタンダード・プロダクト全体の不良率はわずか0.1ppm以下である。極めて高い品質を実現できている。しかも、汎用ディスクリートに限定すれば、不良率はもっと低くなり、10ppb以下まで下がる。

 さらに、当社のスタンダード・プロダクトは、車載向け半導体製品の品質規格「AEC-Q100/AEC-Q101」の取得を基準に開発している。実際のところ、全製品の8割以上が規格を取得済みだ。一方で競合他社の中には、汎用品をベースに車載品を開発しているところが多い。このため当社の方が高品質なだけでなく、コスト競争力が高いと言えるだろう。

 技術力については、パッケージのラインナップが豊富なことが挙げられる。新技術の採用にも積極的だ。例えば、クリップボンディング・パッケージは業界に先駆けて実用化した。これは、ワイヤーボンディングを使わずに、チップとリードフレームを接続するもの。具体的には、2枚のクリップフレームでチップを挟み込むことで接続する。フレームとチップを大きな面で接続できるため、電気特性と熱特性を高められる。特に熱特性は極めて高く、+175℃と高い動作接合部温度を実現可能だ。

日本市場で攻勢に転じる

スタンダード・プロダクト市場におけるNXPセミコンダクターズの現在の位置づけは。

図2 スタンダードプロダクツ領域におけるNXPの位置付け

北野 スタンダード・プロダクトの世界市場における2014年のシェアは、10%を超えた(図2)。業界では第2位であり、ディスクリート半導体市場のリーダー的な役割を果たしている。製品別で見ると、小信号ディスクリート市場ではシェア第1位、車載向けパワーMOSFET市場ではシェア第2位、標準ロジック市場ではシェア第2位である(いずれも2014年)。

日本国内の市場の状況はどうか。

北野 スタンダード・プロダクト市場は、欧州市場は欧州メーカーが、米国市場は米国メーカーが、日本市場は日本メーカーが強い傾向がある。このため、当社の日本市場における現在の市場シェアは決して高いとは言えない数字だ。

 しかし最近、日本国内のスタンダード・プロダクト市場の環境が変化しつつある。一部の国内半導体メーカーがスタンダード・プロダクト市場からの撤退、あるいは今後投資を行わないことを表明しているからだ。当社にとってはチャンスと言える。これを機に、攻勢に転じたいと考えている。

市場は拡大し続ける

スタンダード・プロダクトの市場規模は、拡大しているのか。それとも縮小しているのか。

図3 ディスクリート/ロジックの世界市場

北野 安定した市場といえる。ディスクリート半導体と標準ロジックの市場規模は、2014年に100億米ドルを超えている(図3)。

1990年代の前半には、スタンダード・プロダクト市場はいずれ、半導体製品の集積度の向上によって存在自体が消えてなくなると予測されたこともあった。しかし、そうした予想は外れ、現在でも市場規模は拡大の一途を遂げている。
その理由は何か。

北野 最大の理由は、休むことなしに電子機器の多機能化が続いていることだろう。例えば、スマートフォンであれば、USBが付いたり、タッチパネルが搭載されたりする。そうすると、ショットキー・ダイオードやパワーMOSFETといったディスクリート部品が必要になる。いずれ、こうしたディスクリート部品はICに集積されるだろうが、その前にまた新たな機能が搭載される。

 自動車でもそうだ。電子化が次々に進むことで、電子制御ユニット(ECU)の搭載数が増える。当初は、ディスクリート部品が搭載される。もちろん、そうしたディスクリート部品もいずれはICに集積されるかもしれないが、その前に新たなECUの搭載が必要になる。このためディスクリート部品、すなわちスタンダード・プロダクトの市場規模は拡大し続けることになる。

スタンダード・プロダクトを扱う競合他社の中には、生産中止(EOL:End of Life)を一切しないことを売り文句にするところもある。

図4 パッケージの種類とライフサイクル
既存のスルーホール型パッケージの生産数量は減少期に入っている。その一方で、クリップボンド技術を適用したパッケージや、リードレス・パッケージの生産数量が増加している。今後、市場での主役は、こうした新しいパッケージに切り替わる。

北野 当社としては、10年後、20年後のことは確実に見通せないため、お客様に対して100%コミットすることはできない。

しかし、安心して使っていただけるように、お客様には情報をしっかり提供している。恐らく、生産中止になるリスクが最も高いのはパッケージだろう(図4)。このため、お客様がスタンダード・プロダクトを新規に採用する際には、そのパッケージの現状や、新製品での採用計画の有無などの情報を提供し、判断を仰いでいる。また、古いパッケージで生産中止のリスクが比較的高い場合は、新しいパッケージを採用した製品を推奨している。これによりお客様から信頼を得ており、実際に、スタンダード・プロダクト全体の売り上げの3割以上は、車載のお客様にご購入いただいている。

ダイオードのリーク電流を大幅低減

スタンダード・プロダクトの新製品を紹介してほしい。

表1  低リーク電流のショットキー・ダイオードの品ぞろえ

北野 3つの新製品を紹介しよう。

 1つは、リーク電流が極めて少ないショットキー・ダイオードである(表1)。逆電圧が60V品と、100V品があり、順方向電流はそれぞれ1〜3Aに対応している。リーク電流は、製造プロセスを改善することで、従来のuAオーダーからnAオーダーに削減した。昇圧型DC-DCコンバーターのブロッキング・ダイオードや、降圧型DC-DCコンバーターの還流ダイオードなどに最適だ。もちろん、車載用半導体製品の品質規格「AEC-Q101」に準拠している。このため、自動車のABSやエアバッグなどで既に採用されている。

表2 USB Type-Cに向けたディスクリート半導体

 2つめは、USB Type-Cに向けたディスクリート部品だ。高速データラインと、電源(Vbus)ラインに向けた製品がある(表2)。高速データライン向けは、静電気放電(ESD)保護ダイオードと、ESD保護機能付きコモンモードEMIフィルタだ。1ライン向けや4ライン向け、6ライン向けを用意した。EMIフィルタも、ESD保護ダイオードと同様に、シリコン・チップに作り込んだ。セラミックス材料などを使う受動部品に比べて、実装スペースを削減できるというメリットがある。電源ライン向けについては、サージ電圧保護用ダイオード(過渡電圧サプレッサ)と、負荷スイッチ用パワーMOSFETを用意した。パワーMOSFETはpチャネル品とnチャネル品があり、いずれもオン抵抗が低いことが特徴だ。

3つめの製品は何か。

表1  低リーク電流のショットキー・ダイオードの品ぞろえ

北野 3つめは、ダブルのスイッチング・トランジスタである。SOT363パッケージに、スイッチング・トランジスタを2素子収めたものだ。シングル品を2個使う場合に比べて、実装面積と部品コストを削減できる点が特徴だ。

 1つは、リーク電流が極めて少ないショットキー・ダイオードである(表1)。逆電圧が60V品と、100V品があり、順方向電流はそれぞれ1〜3Aに対応している。リーク電流は、製造プロセスを改善することで、従来のuAオーダーからnAオーダーに削減した。昇圧型DC-DCコンバーターのブロッキング・ダイオードや、降圧型DC-DCコンバーターの還流ダイオードなどに最適だ。もちろん、車載用半導体製品の品質規格「AEC-Q101」に準拠している。このため、自動車のABSやエアバッグなどで既に採用されている。

製品情報

製品カテゴリ 製品 購入
低リーク電流ショットキー整流器 PMEG6010ELR
PMEG6020ELR
PMEG6020AELR
PMEG6020AELP
PMEG6030ELP
PMEG10010ELR
PMEG10020ELR
PMEG10020AELR
PMEG10020AELP
PMEG10030ELP
USB Type-C向けディスクリート
高速データ・ライン用
PESD5V0R1BSF
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PESD5V0C1USF
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PUSB3AB6
PUSB3FR6
PCMF1USB3S 
PESD1USB3S 
USB Type-C向けディスクリート
Vbusライン用
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PTVSxVS1UR
PMPB27EP
PMPB13XNE
PMXB43UNE
ダブル・スイッチング・トランジスタ(SOT363) PMBT4401YS
PMBT2222AYS
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