~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向を毎月お届けします。

高感度、低ノイズの静電容量式タッチセンサ、住設/家電/車載機器市場の開拓を目指す

 静電容量方式を採用したタッチキー(タッチ・スイッチ)の用途が急拡大している。これまでは、薄型テレビやパソコン、DVDレコーダなどのデジタル家電を中心に採用されてきた。しかしここ数年、こうした状況に変化が生じている。電子レンジや洗濯機、炊飯器といった「白物家電」にも広がっているのだ。さらには、キッチンに設置するIHクッキング・ヒーターや、温水洗浄便座などでも採用が始まりつつある。

 さまざまな分野に用途が広がるタッチキー。そうなれば当然のことだが、ユーザーから新たな要望が出てくる。例えば、感度の向上や、高いノイズ耐性の実現、水が付着した状態でも正常な動作を確保することなどである。いずれも、従来のタッチキーのソリューションでは実現が難しかった課題だ。

 多くの半導体メーカが参入し、競争が激化している静電容量式タッチセンサIC市場。この市場において、オン・セミコンダクター社はいかに競争していくのか。今回は、同社のインテリジェントパワーソリューション事業部 車載デバイスBU 車載デジタルマーケティング・アプリケーション課でマネージャーを務める徳永哲也氏に、同社の静電容量式タッチセンサICの特徴や、競合他社品との差異、応用分野などについて聞いた(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

現在、静電容量式タッチセンサIC市場には、多くの半導体メーカが参入している。その中にあって、オン・セミコンダクター社の製品の特徴は何か。

徳永哲也氏

インテリジェントパワーソリューション事業部 車載デバイスBU 車載デジタルマーケティング・アプリケーション課 マネージャー徳永哲也氏

徳永 当社の静電容量式タッチセンサICには3つの特徴がある。
1つは、浮遊容量をキャンセルする技術を搭載していること。
2つめは、感度が高いこと。
3つめは、ノイズ耐性が高いことである。

エアギャップや近接センサを実現可能

こういった特徴を備えていると、ユーザ(電子機器の設計者)に対して、どのようなメリットを提供できるのか。

徳永 この3つの特徴がそろうと、次の3つのメリットを設計者に提供できるようになる。すなわち、「柔軟なセンサ(電極)配置が可能」、「エアギャップが可能」、「近接センサ動作が可能」という3つのメリットである(図1)。

図1 競合メーカ品との比較

関根 IoT市場には当社も、極めて高い期待を掛けている。その中で、WSNデバイスは、IoT市場におけるキーデバイスの一つと考えている。住宅やビル、工場、街などの至るところに設置する、センサーや無線通信回路を搭載したWSNデバイス(IoTデバイス)の市場規模は、2015年には5億個程度だったが、2020年には50億個まで拡大する市場予測もある。ただし、未来の視界は完全に良好というわけではない。WSNデバイスに関する技術的な課題がいくつか残っているからだ。

図2 柔軟なセンサ配置が可能に
浮遊容量をキャンセルする技術を搭載したため、センサ(電極)とICを結ぶ配線を最大500mmにすることが可能になった。センサの配置が柔軟になる。

 2つめの「エアギャップが可能」というメリットは、感度が高いために実現できたと言える。感度があまり高くない場合は、トップカバーとセンサ(電極)の間をプラスチック・スペーサや導光板などの誘電体で埋めなければならなかった(図3)。そうしないと、静電容量の変化を正確に検出できなかったからだ。しかし、感度が高ければ、トップカバーとセンサ(電極)の間を埋める誘電体が不要になる。エアギャップのままで構わない。このため、部品コストを減らせるうえに、誘電体を接着する工程を削減できるようになる。

図3 エアギャップが可能に
感度が高いため、トップカバーとセンサ(電極)基板との間がエアギャップのままでもタッチを検出できる。誘電材料や接着剤が不要になる。

 さらに、「エアギャップが可能」というメリットは、機械式スイッチを置き換える際も極めて有効になる。機械式スイッチを取り去ることで空いた隙間をエアギャップのまま残しながら、静電容量式タッチセンサを取り付けられるからだ。設計変更を最小限に抑えられる。

 3つめの「近接センサ動作が可能」というメリットは、感度が高いことと、ノイズ耐性が高いことの両方が寄与した。感度が高く、ノイズの影響を受けづらいため、指が電極から10cm以上離れていても、静電容量の変化を検出できる。このため、ジェスチャー検出にも利用可能だ。

純粋な相互容量方式を採用

なぜ、こういったメリットを実現できるようになったのか。技術的な理由を説明してほしい。

徳永 自己容量センシング方式ではなく、相互容量センシング方式を採用したことが理由だ。
簡単に両者の違いを説明しよう。自己容量センシング方式は、競合他社の静電容量式タッチセンサICで採用している一般的な方式である。そもそもCoという静電容量があるセンサ(電極)に指を近づけると、新たにC’という静電容量が加わる。このC’という静電容量の増加分を検出することで、タッチしたことを判別する(図4)。

図4 自己容量センシング方式の原理

 実際のところ、自己容量センシング方式を採用するタッチセンサICでは、静電容量の変化を電圧変化に置き換えて検出している。その際に、感度を可能な限り高めるために、静電容量に電荷を定期的に充電する作業を実行している。この充電時間を長くすれば長くするほど、感度を高められる。しかし、充電時間を長くすると、応答速度が遅くなるデメリットが生じる。従って、自己容量センシング方式では、感度をなかなか高められないわけだ。

相互容量センシング方式は、どのような検出原理を使っているのか。

徳永 相互容量センシング方式でも、そもそもCという静電容量を持つセンサ(電極)を用意しておく(図5)。指でこの電極にタッチすると電気力線が切断され、その結果、静電容量(ΔC)が減少する。その減少分を検出することで、タッチの有無を判別する。もちろん、静電容量の変化は、電圧変化で検出する。

図5 相互容量センシング方式の原理

 自己容量センシング方式は静電容量の増加分、相互容量センシング方式は減少分を検出する。この2つの違いは大きい。相互容量センシング方式では、充電する作業が不要だからだ。タッチによって電気力線が切れれば、即座に電圧変化として現れる。従って、高い感度と高い反応速度を同時に実現できるわけだ。

すでに静電容量式タッチセンサICを実用化している競合メーカも、相互容量センシング方式に対応している。そうしたメーカの製品との違いは何か。

徳永 競合メーカの製品は、自己容量センシング方式がベースになっている。それに検出方法の工夫や、マイコンを使った数値演算などを組み合わせることで、相互容量センシング方式にも対応している。マイコンが必要な分、コストが上昇してしまう。一方、当社の製品は、純粋な相互容量センシング方式を採用している。この点が最大の違いだ。

純粋な相互容量センシング方式にはデメリットはないのか。

徳永 強いて挙げれば、2本の配線が必要になることがデメリットにみえるかもしれない。しかし、2本の配線は、機械式スイッチでも必要だ。設計の手間がそんなに増えるわけではない。実際には、デメリットと言うほどの問題ではないだろう。

 一方で、自己容量センシング方式は1本の配線で済むが、浮遊容量の調整が必要になる。これが結構大変な作業だ。こちらの方が、よほど大きなデメリットと言える。

日本国内の車載向けを用意

現在、どのような製品を用意しているのか。

図6 製品化した静電容量式タッチセンサIC

徳永 現在、民生機器向けとして、大きく分けて2種類のICを製品化している。「LC717A00AR/AJ」と「LC717A10AR/AJ」である(図6)。両者の違いは、センサのチャンネル数と出力チャンネル数にある。出力チャンネルは、LEDの駆動などに利用できる。LC717A00AR/AJは、センサ・チャンネル数と出力チャンネル数とも8個。一方、LC717A10AR/AJはセンサ・チャンネル数が16個で、出力チャンネル数が0個である。

 そのほかの基本的な特性は2製品とも同じだ。例えば、電源電圧は2.6〜5.5V。計測可能な容量は4pF以下。マイコンとのインタフェースとしてI2C/SPIを備える。なお、製品型番の末尾にあるRとJはパッケージの種類を示すもので、Rは外形寸法が3.5mm×3.5mm×0.8mmのVCT28、Jは外形寸法が8.0mm×6.4mm×1.6mmのSSOP30に収めている。

民生機器向け以外にも製品を用意しているのか。

徳永 最近市場に投入した新製品「LC717A10PJ」は、日本国内の車載向けである。基本的な性能は、民生機器向けのLC717A10AR/AJと同じだが、信頼性に関する特性が異なる、具体的には、寿命に対する設定や、検査工程などに違いがある。

具体的には、どのような車載機器をターゲットとしているのか。

徳永 例えば、車載用タッチパッドである。運転席の横にタッチパッドを設置し、これを使ってさまざまな操作や設定を行う。手袋やネイルなどを付けた状態でも、指の動きを検出できなければならない。このため当社の静電容量式タッチセンサICが最適だと考えている。

 このような新しいアプリケーションでは、従来の用途からは想定できない課題に遭遇するかもしれない。このため、ユーザと話し合いを重ねることで技術を高めていこうと考えている。

海外の車載市場については、どう取り組む考えか。

徳永 海外の車載機器メーカに採用してもらうには、車載用半導体ICの品質規格「AEC-Q100」の取得が不可欠である。現在、規格の取得に必要な作業を進めているところだ。

シェア拡大のチャンス

競合メーカの中には、パラメータなどを簡単に自動設定できるツールを用意しているところもあり、
差別化のポイントとして挙げている。オン・セミコンダクター社でも、こうしたツールを用意しているのか。

徳永 評価ボード「LC717A00ARGEVK」や技術資料などは用意している。基板レイアウトなどのデータも供給可能だ。しかし、ツールは用意していない。なぜならば、ユーザごとに、設計対象となる電子機器の置かれている環境が異なるからだ。例えば、使用される場面やノイズの環境などである。このため当社では、ユーザと話し合いを重ねながら、アプリケーションごとに丁寧に作り込んでいく方針だ。

現在、オン・セミコンダクター社の市場シェアは、どのくらいか。

徳永 現時点での当社の市場シェアは決して高くない。スマートフォンなどの市場で先行した競合メーカの市場シェアが依然として高い状況にある。

 しかし、市場の様相は変化し始めている。住設機器や家電機器、車載機器などの新市場が急拡大しているのだ。当社にとっては、市場シェア拡大のチャンスだ。高感度で低ノイズというメリットを生かして、新市場を開拓していきたい。

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応募期間
2016年7月12日(火) ~ 7月29日(金) まで

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