~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向をお届けします。

Recom Power Japan 代表取締役のジョルディ・トレバデイ (Jordi Torrebadell)氏

 ドイツの電源メーカーであるRECOM Power社。同社が誕生したのは今から40年ほど前の1974年のことだ。当初は、ドイツ、スイス、オーストリアといった欧州での活動が主だったが、2004年からグローバル展開に重点を置く。そして2014年5月に、日本国内にも営業拠点を開設した。現在の主な製品は、DC-DCコンバータ、スイッチングレギュレータ、AC-DCコンバータ・モジュール、LEDドライバなどである。

 日本には、こうした製品を扱う電源メーカーが数多く存在する。競争環境は極めて厳しい。そうした市場において、どのようにしてRECOM社の存在感を高めていくのか。今回は、RECOM Power Japanで代表取締役(Representative Director)を務めるジョルディ・トレバデイ(Jordi Torrebadell)氏に、同社の技術や製品の特徴や強み、日本市場の開拓に向けた戦略などについて聞いた
(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

グローバル化によって開設された海外拠点について教えてほしい

Torrebadell 最初に進出したのは、アジアである。2004年にRECOM Asia社をシンガポールに開設した。次は米国で、ニューヨークに2007年にRECOM Power社を設立した。2009年には上海に進出し、そして最近では、2014年5月に日本にRECOM Power Japanを設立した。また、2014年10月には、オーストリアで新しいRECOM社の本社ビルが建設された。

海外拠点は、どのような業務を担当しているのか

Torrebadell 営業拠点であると同時に、技術的なサポートを行う拠点でもある。当社の営業担当者は、技術を理解する力が求められる。つまりフィールド・アプリケーション・エンジニア(FAE)の仕事が求められる。具体的には、ユーザー企業を訪問し、技術的な要求や品質に対する要求などの情報を吸い上げ、ドイツの本社に伝える仕事だ。本社では、世界中から集められた情報を製品の改良や新製品の開発などに生かす。

何故工場をヨーロッパや中国ではなく、台湾に建設したのか

Torrebadell ヨーロッパに工場を建設すると、競争力のある価格を出すことが出来なくなる。それで品質と信頼性の高さを重視し、台湾への工場建設を選択した。

産業、医療、エネルギ、照明、輸送に注力

電源と一口に言ってもさまざまな製品がある。RECOMが特に注力しているのは、どのような製品なのか

Torrebadell 当社はローパワーDC-DCコンバータに注力してスタートを切った企業だ。その後当社は注力範囲を広げていき、現在主力となっている製品はDC-DCコンバータに加え、AC-DCコンバータ、LEDドライバを含む、150Wまでのミドルクラスコンバータなどだ。

 製品の種類は一般的なものだが、対象としている市場分野に特色があると考えている。当社には、5つの重点分野がある。1つはインダストリアル(産業機器分野)。2つめはメディカル(医療機器分野)。3つめはエネルギ(電力機器分野)。4つめはライティング(照明機器分野)。5つめはトランスポーテーション(輸送機器分野)である。

日本の市場でも、この5つの分野に重点を置いているのか

Torrebadell その通りだ。日本市場でも同様に5つの分野に重点を置いている。ところが日本の電源メーカは元々インダストリアルと車載分野が強い。このため、この2分野というのは当社のような海外のメーカが新規に参入することが難しい市場だ。

RECOMの製品では、スタンダード(標準)品とカスタム品の比率はいくつか

Torrebadell スタンダード品が70%、カスタム品が30%という比率である。

日本のユーザー企業と海外のユーザー企業の要求にはどのような違いがあるのか

Torrebadell とにかく日本の要求はハイテクニカルだ。特に、品質に対するこだわりは極めて高い。ただし当社は、そうした声を聞いて対応できるだけの高いフレキシビリティがある。このため、日本のユーザーの要求に応えることが可能だ。

さらに、日本のユーザー企業は、信頼を勝ち取るのが大変だ。海外のユーザー企業であれば、製品の良さを説明し、それを評価してもらえれば、すぐに大きなビジネスへと発展する。しかし、日本のユーザー企業は違う。どんなに優れた製品だとしても、まずは小さなビジネスからスタートする。そうして品質や納期などの信頼をコツコツと積み上げることで、大きなビジネスへとつながる。

 日本に拠点を設立したのは2014年5月だが、10年ほど前から販売代理店を介して小さなビジネスに取り組み、少しずつ信頼を積み上げてきた。このため、日本の大企業の大きなプロジェクトに採用されるようになっている。

技術的なアドバンテージを有す

日本の電源メーカーの製品や技術と比較した場合、RECOMの方が上回っている点は何か

Torrebadell 絶縁耐圧(アイソレーション)が高いことだ。例えば、医療機器に向けたDC-DCコンバータでは、10kVDCと高い絶縁耐圧を確保することが可能だ。日本の電源メーカーには、絶縁耐圧がこれほど高い製品はない。なぜRECOMがこうした製品を製造できるのか。その理由は、トランスを独自に開発し、インハウスで製造しているからだ。

 上回っている点はもう1つある。DC-DCコンバータなどのモジュールの内部に樹脂を充填(ポッティング)していることだ。日本の電源メーカーの製品はオープンフレーム型が多いため、ポッティングは施していない。樹脂をポッティングすれば、湿度やホコリ、ゴミに対する耐性が高まり、品質が向上する。さらに振動にも強くなる。トランスポーテーション(輸送機器)の分野では欠かせない特徴だ。

最近市場に投入した特徴のある製品を紹介してほしい

Torrebadell 2015年2月に製品化した医療機器向けDC-DCコンバータを紹介しよう。この製品は、患者に直接触れる医療機器や、モニタリング機器、CTスキャナやMRI装置などに向けたものだ。出力電力が最大3Wの「REM3」と最大6Wの「REM6」、最大10Wの「REM10」がある。外形寸法は、3製品とも同じで、31.8mm×20.3mm×10.2mmである。

 最大の特徴は、医療機器の安全性と基本性能に関する技術規格「IEC60601-1 3rd Edition」に準拠している点にある。この規格に準拠するのは技術的に難しい。このため取得した製品は、まだ少ない状況にある。従って、当社にアドバンテージがある。さらに2MOPP(Means of Patient Protection)に対応した。MOPPとは患者保護のこと。2MOPPでは、患者を保護する手法を2つ採用していることを意味する。安全性をより高められるわけだ。

このほかの特徴としては、連続動作電圧が250VACと高いことや、空間距離と縁面距離がいずれも8mmと長いこと、絶縁耐圧が5kVACと高いこと、漏れ電流が2μAと少ないことなどが挙げられる。特に、5kVACの絶縁耐圧は極めて高く、今回当社が初めて達成した数字である。

製品情報

特徴 製品画像 シリーズ データシート 購入
・Medical向けDC/DC converters
・サイズ:31.8mm×20.3mm×10.2mm
・絶縁耐圧:5kVAC
・連続動作電圧:250VAC
・漏れ電流:2μA
・効率:89%
・IEC60601-1 3rd Edition 準拠
・2MOPPに対応
REM3
電力3W

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REM6
電力6W

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REM10
電力10W

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特徴 製品画像 シリーズ データシート 購入
・Medical向け高効率AC/DC converters
・IEC60601-1 3rd Edition 準拠
・連続動作電圧:250VAC
・漏れ電流:<75μA
・効率:92%
・2MOPPに対応
RACM100
電力100W

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