~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向を毎月お届けします。

標準電源への取り組み強化へ、半導体技術と回路技術を強みに産業機器を狙う

 電源のない電子機器は存在しない。電子機器にとって電源はまさに「心臓」に当たり、極めて重要な役割を果たす。電源が止まれば電子機器本体が停止してしまい、電源からノイズが発生すれば電子機器の動作に悪影響を及ぼし、電源からの発熱が大きくなれば電子機器は一時停止を余儀なくされる。

 電源メーカーは、電源を開発/製造して電子機器メーカーに提供する。もちろん電子機器メーカーが内製することもあるが、そうしたケースは減っており、電源メーカーの活躍の場は以前に比べて広がっている。電源メーカーが提供する電源は大きく分けて2つある。1つは「カスタム電源」である。電子機器メーカーが規定した仕様に合わせて、電源メーカーが設計/製造するものだ。もう1つは「標準電源」。電源メーカーが用意したカタログの中から、電子機器メーカーが最適な電源を選択して使う。

 サンケン電気は、カスタム電源を得意とする電源メーカーである。テレビやプリンタなどに向けたカスタム電源において業界大手だ。その同社が、新たなビジネス戦略に乗り出した。今回は、同社のパワーシステム本部 パワーマーケティング統括部の大野哲彦(おおの・てつひこ)氏に、新しいビジネス戦略に着手した理由やその勝算などについて聞いた(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

新しいビジネス戦略とは何か。

大野哲彦氏

パワーシステム本部 パワーマーケティング統括部 大野哲彦氏

大野 これまで当社は、AC-DCコンバータ(スイッチング電源)では、カスタム電源市場に注力してきた。かつては、テレビなどの民生市場向けカスタム電源で極めて大きなビジネスを手がけ、現在も民生市場がビジネスの柱となっている。カスタム電源は依然として、当社を支えるビジネスである。

 しかし、電子機器市場を見渡すと、大きな環境変化が起こっていることに気付く。テレビやパソコン、DVDレコーダといった民生機器の製造の主導権は、中国や台湾、韓国などの東アジア・メーカーに奪われた。日本国内の電子機器メーカーは、こうした環境変化に対応するため、民生機器から産業機器や医療機器、FA機器などへ、ビジネスの軸足を移しつつある。
当社の主なユーザーである電子機器メーカーがビジネス戦略を見直しているのだ。当社も変わる必要がある。そこで産業機器や医療機器、車載機器などの民生以外の市場にも注力していくことを決めた。産機市場に対しては標準電源のビジネスにも力を入れていく。

カスタム電源と標準電源は何か違うのか。

大野 カスタム電源は、電子機器メーカーが電気的特性(出力電圧や出力容量など)や外形寸法や基板への取り付け方、コネクタ形状などの仕様を策定し、電源メーカーがそれに合わせて製造したものだ。一方、標準電源は、電源メーカーがあらかじめ電源を開発/製造しておき、それらを掲載したカタログから電子機器メーカーが最適なものを選択して使う。洋服に例えれば、カスタム電源は「オーダーメイド」であり、標準電源は「既製服(レディメイド)」に相当する。

キー・デバイスを持っている強みを生かす

標準電源市場では、既に複数のライバル企業が先行している。こうしたライバル企業に対して、どのような方法で対抗していくのか。

図1 ノイズが極めて低い標準電源
サンケン電気の「HWBシリーズ」である。単出力品と2出力品を用意。単出力品の品ぞろえは5V出力(15W/30W/60W)、12V出力(30W/60W)、15V出力(15W/30W/60W)、24V出力(60W)。2出力品は±15V出力(15W/30W)である。ワールドワイド入力に対応する。

大野 当社の強みは、電源メーカーでありながら、電源用半導体デバイス・メーカーでもあることだ。電源(AC-DCコンバータ)制御ICやパワーMOSFET、ダイオードなどを開発/製造し、販売している。さらにトランスの設計/製造技術もある。

 電源制御ICには、AC-DCコンバータに関するノウハウのすべてが詰まっている。パワーMOSFETやトランスは、変換効率やノイズなどの電源特性に大きな影響を与える。これらのデバイスは電源のキーデバイスであり、これらをいかに組み合わせて、それぞれの性能を引き出すか。電源設計では、それが重要だ。当社は、電源のキー・デバイスすべてを持っている。このため電源の用途に応じて、最適設計することが可能である。電源用半導体デバイスを持つ電源メーカはサンケンだけだ。その差は大きい。

電源のキー・デバイスを持っているという強みは、標準電源の特性/性能にどのように表れるのか。

図2 極めて低いノイズを実現(a)
「HWBシリーズ」では、ノイズを極めて低く抑えた。(a)は出力端子ノイズ、(b)は放射電磁ノイズの測定結果である。いずれも規格値を大きなマージンを持ってクリアできる。

大野 ライバル企業の製品に比べて、部品点数を確実に削減できる。このため、小型化と省スペース化を実現できるとともに、コストを減らせる。さらに、変換効率でも、ライバル企業の製品を上回ることが可能になる。

このほかにも強みはあるのか。

大野 強みはもう1つある。それは、電源回路技術の1つである電流共振技術を有している点だ。この技術を使えば、高効率で低ノイズのAC-DCコンバータを実現できる。

サンケン電気では、電流共振方式を採用したAC-DCコンバータ制御ICを販売している。このICを購入すれば同等性能のAC-DCコンバータが実現できるのではないか。

大野 実は、電流共振採用のAC-DCコンバータ制御ICの最大性能を引き出すのは、そんなに簡単ではない。
ポイントとなるのは、スイッチング周波数や制御応答性能などの回路設計、トランスの設計、基板レイアウト設計/、配線設計の3つである。これらのポイントを最適に設計しなければ、最大の性能は引き出せない。つまりエンジニアの実力によって性能が変わってしまう。当社は電源メーカーであるため、電源技術に精通したエンジニアがいる。だから、最大の性能を引き出せるわけだ。

10年を超える技術的優位性を誇る

産業機器や医療機器、FA機器に向けた標準電源として、今後販売に力を入れていく製品を紹介してほしい。

図2 極めて低いノイズを実現(b)
「HWBシリーズ」では、ノイズを極めて低く抑えた。(a)は出力端子ノイズ、(b)は放射電磁ノイズの測定結果である。いずれも規格値を大きなマージンを持ってクリアできる。

大野 2つの製品を紹介する。1つは、競合他社品に比べて技術的な優位性が極めて高い標準電源「HWBシリーズ」である(図1)。最大の特長は、ノイズが極めて小さいことだ。出力端子ノイズも、放射電磁ノイズ(EMI)も極めて小さい(図2)。実は、この製品は約10年前に製品化したものだ。しかし、現時点でもまだ、競合他社は同じレベルの製品を実用化できていない。

なぜ競合他社は追いつけないのか。

大野 HWBシリーズは、前述の電流共振技術を採用している。それに当社のエンジニアが持つトランスや基板レイアウト、配線設計のノウハウを加えている。競合他社が追いつこうとも、たやすく追いつける技術レベルではない。

HWBシリーズの主な用途は何か。

大野 従来、ノイズを嫌う電子機器では「ドロッパ」と呼ぶ方式の電源を使っていた。これは、パワートランジスタの抵抗成分で電力を消費させて、出力電圧を安定化するもの。ノイズは極めて低く抑えられるが、変換効率は著しく低い。HWBシリーズであれば、ドロッパ電源とほぼ同レベルのノイズに押さえ込めると同時に、一般的なスイッチング方式のAC-DCコンバータと同程度の高い効率が得られる。
このため主な用途は、ノイズを嫌うアプリケーションになる。具体的には、医療機器や計測器、産業機器など。こうした用途にHWBシリーズを搭載すれば、ノイズを低く抑えられる上に、電源の小型化や発熱量の削減を達成できる。

10年を超える技術的優位性を誇る

もう1つの製品は何か。

図3 待機時消費電力が小さい標準電源
サンケン電気の「CWBシリーズ」である。15W出力品、30W出力品、50W出力品を用意。ワールドワイド入力に対応する。

大野 もう1つは、2015年9月に販売を開始する「CWBシリーズ」である(図3)。この製品の特長は、待機時(スタンバイ時)の消費電力を大幅に低減した点にある。出力容量が15Wと30W、50Wの製品を用意しているが、いずれも従来品に比べると待機時消費電力が1/4〜1/5と低い(図4)。

どのようにして待機時の消費電力を削減したのか。

図4 競合他社品比で1/4〜1/5を実現
CWBシリーズは、待機時消費電力が小さいことが特徴だ。待機時消費電力は、競合他社品比で1/4〜1/5と小さい(出力容量で異なる)。

大野 待機時消費電力の削減に向けた当社独自のAC-DCコンバータ制御ICを採用することで実現した。技術的なポイントは2つある。1つは、軽負荷時にスイッチング周波数を低くして電力損失を低減する間欠発振を採用したこと。もう1つは、内部回路をこまめに切ることで制御IC自身の消費電力を減らしたことである。

主な用途は何か。

大野 CWBシリーズは基板タイプである。すなわち、電源の長手方向の左端部に入力端子、右端部に出力端子を取り付けたタイプである。入出力端子を同一の端部に取り付けたユニット・タイプではない。ユニット・タイプは、制御盤などに取り付けて使う。一方、基板タイプは電子機器に内蔵して使用するタイプだ。主な用途としては、半導体製造装置、工作機械、FA制御機器、分析装置などの産業機器の制御電源を想定している。
こうした産業機器の電源は、かつては内製することが多かった。しかし最近では、電源技術者が減っており、外部から購入するニーズが高まっている。今後、標準電源にとって産業機器は、主戦場になると考えている。従って、CWBシリーズは、将来の主力機種という位置付けになる。

産業用電子機器でも、待機時消費電力の削減が求められているのか。

大野 これまで産業機器では、待機時消費電力はあまり問題になっていなかった。しかし最近になって、気にする産業機器メーカーが増えてきた。CWBシリーズは、こうした動きに注目して対応した製品である。

製品情報

汎用スイッチング電源
各種安全規格を取得し幅広い用途にお使いいただける汎用スイッチング電源。

カテゴリ 入力電圧 シリーズ名 購入 出力電力(W) 出力電圧(V)
15 30 50 60 100 150 240 650 5 12 15 24 36 48
基板タイプ
(カバー付き
オプション有)
ワイド入力
(AC85V~AC265V)

CWB

ユニット
タイプ
ワイド入力
(AC85V~AC264V)

SWG

基板タイプ

SWF
*4


*6
ユニット
タイプ

SWD
*5

ユニット
タイプ

SWC

ユニット
タイプ
ワイド入力 ※3
(AC85V~AC264V)

HWB


*1
ユニット
タイプ
ワイド入力
(AC85V~AC264V)

HWB


*2
ユニット
タイプ
ワイド入力
(AC85V~AC265V)

SWH

  • *1 60W品のみ
  • *2 ±15Vになります。
  • *3 HWB060SのみAC85V~132V/AC170V~264V自動切替
  • *4 2倍ピーク負荷対応
  • *5 2.5倍ピーク負荷対応(240Wは2倍対応)
  • *6 24V出力のみ

セミカスタム電源

DCセルモジュールの多様な組合せで実現するフレキシブルなマルチ出力セミカスタム電源
Cシリーズ本体とDCセルモジュールを組みあわせてご利用いただく電源です。
希望の出力仕様のDCセルモジュールを選んでいただき、本体に接続して使用します。
13種類のDCセルモジュールを用意しています。使用用途によってDCセルモジュールを交換することも可能です。

カテゴリ 入力電圧 シリーズ名 購入 出力電力(W) 出力電圧(V)
300 400 450 600 650 900 3.3 5 12 15 24
セミ
カスタム
ワイド入力
AC85V~AC132V/
AC180V~AC264V

(本体部)

(DC
モジュール)