調理と火災を高精度に判別 ADIの煙センサーでスマートビルディングを実現 前編

調理と火災を高精度に判別 ADIの煙センサーでスマートビルディングを実現 前編

数あるスマートビルディングソリューションの中で、本当に役に立つシステムはどういうものなのでしょうか?当社のアプリケーション・エンジニアがお届けするアナログ・デバイセズ社の新連載シリーズをお届けします。
今回選んだのは、最新光学センサーモジュール「ADPD188BI」です。

こちらのセンサーは、2種類の光学センサーを内蔵し、より高精度に煙の種類を判別するためのセンサーとフロントエンドを含んだモジュールです。このモジュールを使用することで、料理中の煙と、火災の煙を判別することができます。既に、国際規格であるULの認証(UL268/UL217)を得ており、カナダをはじめ、多くの先進国での導入が加速しています。

この記事では、ADPD188BIについて2回に渡り製品の特徴と使い方について解説します。

背景:火災より煙

火事で恐ろしいのは、火炎より煙です。建物火災で死亡した原因を見ても、火傷より一酸化炭素中毒や窒息によるものが多くなっています。最近の住宅は、より高い断熱性能や新素材を使用したものが多く、旧来の木造構造よりも多くの煙が出ることがわかっています。もちろん火災も甚大な事故ではありますが、それが燃え移って素材から発生する煙こそ注意しなければいけない存在です。

特徴的な事は、犠牲者の半数以上が65歳以上の高齢者となっているだけでなく、5歳以下の乳幼児の死亡が多い点も見逃せません。これは、煙のスピードが速いため、逃げ遅れているからと言えます。

煙のスピードは 、横方向に毎秒0.5〜1メートル(歩く速さ)、縦方向には毎秒3〜5メートル(かけ足の速さ)といわれています。特に、住居など縦方向の移動が伴う場合は、圧倒的に煙のスピードが速く、視界が遮られ、呼吸も困難となり、大きな被害へと繋がってしまいます。速やかな避難に心がけてください。

火災報知器や煙感知器の設置率

こうした被害に遭わないためには、火災報知器や煙探知機の設置が欠かせません。ほとんどの住宅には設置されていると言う印象ではありますが、実際はかなり差がある統計データもあります。

こちらに引用しておきます。

引用:https://jumbo-news.com/20612/

ADPD188BIの主な特徴

少しだけですが、煙がいかに危険な存在で、一刻も早くキャッチすることがセンシングシステムには重要になってきているかが分かっていただけたかと思います。
そこで今回紹介するのが、ADPD188BIです。ADPD188BIは、アナログ・デバイセズ社の光学センサーシリーズの最新製品です。小型デザイン・省電力性能はもちろんのこと、Photo Diodeを使用した光学モジュール内蔵で、内部には赤色と青色のLEDも搭載しています。誤動作の低減はもちろん、校正の削減や、法規制にも対応しています。

下の写真では、左側が発光部で、右側が受光部になります。この発光部には2色のLEDが配置されており、煙が入ってくるとその乱反射の回析を右側のPhoto Diodeで検出することで作用するように作られています。

煙を効率よく検出するには、図のようなオープンな状態では発散しいてしまうため、うまく作用しません。

そこで、用意されたのが、チャンバー付きのモジュールです。このチャンバーと組み合わせることで、チャンバーから侵入した煙を効率よく解析することができ、火災による煙なのか、調理中の煙なのかを判別することが可能になりました。

素材の違いによるデータの違い

このデータは、木材を燃やした時の煙の出方のデータです。チャンバーなしとチャンバーありのセンサー出力データです。赤い線が、赤色LEDからセンシングしたデータ、青い線は、青色LEDからセンシングしたデータです。チャンバーありの方が、データが綺麗に検出できていることがわかります。

IoTシステムでは、このようなセンシングデータをエッジ側で処理するシステムが増えていますが、データのクレンジングが後段処理にとって優位であることは間違いありません。

次に、ちょっと変わったデータをご紹介します。こちらは、何を燃やしているかわかりますか?

正解は、ハンバーグの調理中に出る煙です。チャンバーありなし関係なく、非常に近いデータを検出しています。赤のLEDだけでは、判別不可能なデータが見てとれますが、青いLEDを搭載することで、その違いを検出することができています。

何が違うかと言うと、煙の粒の大きさです。これをエアロゾルと言います。このエアロゾルの粒子判定がADPD188BIは可能なのです。これこそが、ADPD188BIの最大の特徴と言えます。調理中の煙を火災の煙と誤判してしまうことは、とても危険です。安全で快適な暮らしを守るには、ADPD188BIのようなセンサーが欠かせないと言えます。

次回は、ADPD188BIの評価ボードのご紹介と、そのツールの使い方を解説します。

お楽しみに。

調理と火災を高精度に判別 ADIの煙センサーでスマートビルディングを実現 後編