- 第1回 : ADALP2000で学ぶ電源設計の基礎
- 第2回 : リニア・レギュレータについて
- 第3回 : 三端子レギュレータの使い方
- 第4回 : スイッチング電源の基礎原理
- 第5回 : 電源設計で考慮しなければいけない課題
- 第6回 : ADALM-SR1を使った解説
第1回 : ADALP2000で学ぶ電源設計の基礎
はじめに
この記事は、初めて電源を設計する学生や新人エンジニアに向けて、電源設計の基礎知識やポイントを、アナログ・デバイセズ社のADALM2000パーツキットADALP2000を使って解説していきます。基礎的な内容が多いですが、実波形を使用することを心掛けているので、より実信号を理解できると考えています。
もくじ
- 電子機器に欠かせない電源
- ADALM2000とは?
- 直流と交流の違い
- 直流電源を作る前に、知っておくべき基礎回路
- まとめ
電子機器に欠かせない電源
世の中に存在するあらゆる電気機器は、必ず何らかの電源を必要としています。それは、IoTのセンサーであったり、AIによる画像認識、日々使用しているスマートフォンやパソコン、テレビ、白物家電、エレベータ、自動車、電車、工場で動くベルトコンベアや、小型人工衛星であれ、必ず電源を必要としています。
もちろん、用途によってその電源の電圧や種類は異なりますが、小さなものから大きなものまで幅広い用途で使用されるのが電源です。
これから解説する電源回路は、そのほんの一部にすぎません。ですが、応用範囲は広いと思いますので、皆さんに活用してもらえると幸いです。
ADALM2000は、入力12ビット、30MSPSのスピードでサンプリングできるADC部分と50Mbpsで出力可能なDAC部分を搭載している手のひらサイズの計測器です。
高速な信号の計測はできませんが、電源で必要とする信号波形は、十分カバーできるスペックのものです。
また、PCのソフトウェア「Scopy」で様々な機能が使えます。
- オシロスコープ機能
- ネットワークアナライザ機能
- スペクトラムアナライザ機能
- 16chデジタルIO機能
- マルチメータ機能
- 5V電源供給機能
などなど、魅力的な機能が満載です。
まだ持っていないという人は、チップワンストップのサイトから入手しましょう。
詳しい使い方は、こちらの記事や動画を参考にしてください。
また、パーツキットのADALP2000も一緒に使用すると、様々な実験ができますので、こちらも併せて持っておくといいでしょう。
直流と交流の違い
電源には、大きく分けて2種類の電源方式があります。
交流 : AC(Alternating Current)
直流 : DC(Direct Current)
ACは、図2のオレンジ色の波形のように時間で電圧が変化します。
図2 : AC電源に見立てた交流波形(実際の家庭用電源の波形ではありません。)
DCは、図3のオレンジ色の波形のように常に一定の電圧が流れています。
図3 : 直流電圧
直流電源を作る前に、知っておくべき基礎回路
直流電源を直流から作ることもありますが、一般的には交流から直流を作ります。
そのためには、いくつか回路を組む必要があります。この記事では、以下の3つについて解説します。
- トランスを用いた降圧回路
- ダイオードを用いた整流回路とブリッジ回路
- コンデンサを用いた平滑化回路
トランスを用いた降圧回路
今回は、技術的な説明のために、回路理論のみに留めておきますが、扱う電流、電圧に合わせた部品を用いれば、問題ありません。
日本国内の場合、AC電源は主に100Vが使用されています。最近でこそ、効率の良い200Vも増えてきていますが、やはり100Vがまだまだ一般的です。
このAC100Vをそのまま一般的な電子部品に電源として供給するには、電圧が高すぎるので、図4のトランス(変圧器)を使用して、電圧を落として、利用します。
図4 : トランスの回路例
実際には、このようなトランスを用います。1次側の電圧と2次側の電圧に合致する製品を選ぶとともに、電流容量も確認しておくといいでしょう。
トランスを用いることで、100Vから電圧を落とすには、トランスを用いることを説明しました。最近のスマートフォンなどの充電器用トランスは、もっと小型のトランスが用いられています。トランスは、扱う信号によって、様々な種類があることも覚えておくといいと思います。
トランスで落とされた交流電圧から直流を作るには、+と-の極性を統一する必要があります。そのためには、ダイオードを使って、+側の極性の電気を使います。
ダイオードを使った整流回路とブリッジ回路
ダイオードを使った整流回路例を見てみましょう。
回路図は、図5のような構成になります。
図5 : ダイオードの回路
この回路に交流の信号を入れると、+側の半分だけの電気が取り出せます。
実際の動作波形を図6に示します。
図6 : ADALM2000によるダイオードを通した交流波形
このままだと、マイナス側の半分の電気は捨てていることになります。
今度は、図7のようにダイオードを反対向きにつけた場合を考えます。
図7 : ダイオードを逆向きにした場合
ダイオードを逆向きにした場合は、図8のように下半分の電圧が取り出せます。上半分は捨てられてしまいます。
図8 : 逆向きのダイオード出力
そこで考え出されたのが、ブリッジ回路です。
ブリッジ回路は、図9のような構成になっています。
図9 : ブリッジ回路
このブリッジ回路を実際に組むと、図10のようになります。(ダイオードの向きに注意)
図10 : ブリッジ回路を組んだところ
ブリッジ回路を通った交流は、図11のように+側の時は+の電気として出力し、図12のように-側の時は、-の電気を+に変換して、+の電気として出力します。
図11 : +側の波形の場合の電気の流れ
図12 : -側の波形の場合の電気の流れ
このポイントは、ブリッジ回路にある真ん中を基準点として計測しているため、図13の全波整流(+側)された波形を観測することができます。
図13 : 基準点で計測した全波整流の波形
コンデンサを用いた平滑化回路
次に、図14のようにブリッジ回路を通った交流波形に、コンデンサを追加します。
図14 : ブリッジ回路にコンデンサを追加した平滑化回路
コンデンサを追加することで、山型の波形に対して、充放電を行います。
どうなるかというと、山の上に向かって電気エネルギーが蓄えられるため、波形は山型になりますが、ピークを超えると電圧が徐々に低下していきます。その時、コンデンサに蓄えられていたエネルギーを放電することになるので、ブリッジ回路で見た波形よりもなだらかなカーブで電圧が落ちていきます。その間にも、次の電圧が立ち上がってきますので、コンデンサに充電されます。この動作を繰り返すことで、図15のようなきれいな直線ではありませんが、直流電源に近くなってきました。図16は、実際に計測した波形です。
図15 : 全波整流から平滑化された波形
図16 : 実際の平滑化された波形
平滑化回路は、コンデンサを追加するだけの回路技術ですが、電源にはこのような技術が利用されています。
まとめ
今回は、電源の基礎として、ACからDCにするための基本回路を解説してみました。次回は、リニア・レギュレータについて説明します。お楽しみに!

