第3回 : 三端子レギュレータの使い方
はじめに
第3回目は、リニアレギュレーターについて、実際のデバイスを利用しながら、より理解を深めていきたいと思います。今回は、三端子レギュレータの使い方を解説し、後半にはパーツキットADAPL2000にあるLDO(ADP3300)を使った使い方を解説します。
実機を使うことで、リニアレギュレーターの動きを体験し、電源回路設計の理解を深めたいと思います。
もくじ
- 三端子レギュレータの使い方
- LDOレギュレータの使い方
- まとめ
三端子レギュレータの使い方
三端子レギュレータは、どこでも入手可能な電源回路用ICです。見た目は、大きなトランジスタのように見えます。(図1)
この中に、前回解説した回路が入っており、入力電圧に対して取り出せる電圧が固定のものや外部部品(抵抗など)で取り出せる電圧が可変のもの、定電圧ではなくて定電流のタイプまでさまざまなバリエーションが存在します。
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図1 : 三端子レギュレータ
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図2 : LT1086の回路例
その中で、一般的な三端子レギュレータを例に挙げます。
Analog Devices社では、LT1086という製品が相当します。このパーツは、ADALP2000の中には入っていませんが、端子が3つだけなので、簡単に使うことができます。(図2)
内部のブロック図を示します。(図3)
図3 : LT1086のブロック図
一見、難しそうに見えていますが、基本的には前回解説した回路ブロックに保護回路等が入っていると理解することができます。
Vin端子に入力電圧を加えると、Voutから出力電圧が得られます。
データシートの参考回路例をみると、図のように示されており、ADJ部で調整ができそうだということがわかります。
R1とR2の比で取り出せる電圧を調整することができます。
図4 : 基本使用例1
図中の式に基づいた参考回路例も掲載されています。(図4)
図5 : 基本使用例2
非常に簡単に構成できるのが、三端子レギュレータの大きな魅力です。
ただし、良いことばかりではなく、発熱の問題が伴います。
その場合は、広い空間を用意し、放熱性能を高めるなど、基板やケースに収める際に工夫が必要になります。
細かい説明は、割愛させていただきますが、必ずヒートシンク(図6)をつけるようにして、データシートの熱に対する配慮の項目も必ず確認するようにした方がいいでしょう。
図6 : ヒートシンク
また、ノイズに対する配慮も忘れないようにすると万全です。この例では、Vadjピンにコンデンサを追加することで、レギュレータ内で発生するリプル成分を除去することができます。
RippleやNoiseといったキーワードをデータシート中に探して、試行錯誤することが深い理解へとつながりますのでおすすめです。
ADALM2000を使って、ピンを観測し、実際にリプル成分が出ているかどうかを確認するのもいいと思います。ADALM2000とScopyを併用すれば、FFTも解析できるため、より電源周りのノイズに対する理解が深まります。
ADALM2000でFFTを使う方法の詳細は、こちら。
LDOレギュレータの使い方
ADALP2000の中には、三端子レギュレータが入っていなかったので、説明だけになりましたが、LDO(Low Dropout Liner Regurator)であるADP3300(図7)が入っています。フラットパッケージですが、DIP変換されてADALP2000に入っていますので、すぐに試すことができそうです。
LDOは、入力される電圧と出力する電圧の差が低いため、熱も発生も抑えられ、パッケージも小さくできることから、比較的低消費電力で動かすシステムに利用されています。
実際には、IoT関係の電源システムでは、バッテリーの電源からLDOを通して、マイコンなどに電力を供給しているシステムなどが多く見られます。
他には、より安定した電圧が必要な機器などにも応用されています。
図7 : ADALP2000に入っているADP3300
このように用途が幅広いLDOなので、一品種でも構造や特性を理解していれば、実際に回路を設計する際に、デバイス選定に役に立つと思います。
では、ADP3300を少し見ていきましょう。
こちらが、ブロック図になっています。(図8)
図8 : ADP3300のブロック図
三端子レギュレータ同様、基本ブロックが分かっていれば内部の回路もそれほど難しくは感じないのではないでしょうか?
基本的な使い方は、INに入力電圧を入れます。OUTから電圧が出力されます。
一般的なLDOは、外付けの抵抗で出力電圧を調整するよりも、すでに出力電圧が固定されているものが多く使われています。
ADALP2000に入っているADP3300も、3.3V/50mA出力のタイプが搭載されています。
このくらいの範囲であれば、ADALM2000から5Vを供給して、ADP3300に電圧を入れた場合に、3.3Vが出力されることが確認できそうです。
ADP3300は取り出せる電流容量も50mAと比較的低いため、ヒートシンクをつけるほどではないですが、より多く電流を取り出せるものは熱対策は欠かせない項目になります。
では、実機の様子をみてみましょう。図9は、実際の配線です。データシートを確認して、配線します。
図9 : 1番ピン GND ADALM2000のGND
- 1番ピン : GND ADALM2000のGND
- 2番ピン : NC
- 3番ピン : Vin ADALM2000のV
- 4番ピン : NC
- 5番ピン : Vout ADALM2000の1+
- 6番ピン : ERR ADALM2000の2
今回は、上記のように接続しています。
Scopyで、5Vを供給し、ADP3300の電圧を計測しています。(図10)3.19Vが確認できています。
0.11V程度ドロップしております。
図10 : Scopyの電圧計で計測している様子
ADP3300には、Active LowのnERR端子がついています。
(「nERR」と表記することで、Active Lowの信号であることを示しています。)
こちらは、レギュレータの動作ができなかった場合や過負荷になった場合など、LDO回路に何らかの問題が発生した際にLow出力されるようです。
実際に、ADP3300に供給する電圧を落としてみたいと思います。オシロスコープで、nERRピンを計測します。Ch1はVout、Ch2はnERRピンを接続しています。
図11 : Vin低下に伴い、nERRがActiveになる様子
入力電圧を下げた場合に、nERRピンがLowを出力している様子がみて取れます。(図11)
バッテリー駆動しているマイコンなどに外部割り込みとして使用すれば、電源の低下だけでなく電源関連のトラブルにも対応できるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、リニアレギュレータの後半ということで、一般的なパーツの解説と、パーツキットに入っているリニアレギュレータ(今回はLDO)を使用した実験記事をお送りしました。また、そのデバイスが持っている機能などあまり解説記事がない内容も少し盛り込んでみました。
何気なく使う電源でも色々な種類やメーカもあります。熱やノイズなど、いくら経験を積んでも壁が立ちはだかるものです。
細かい解説はしていませんが、実機に触りながら学べる環境は、意味があると思っています。ぜひ次回もお楽しみに!

