第2回 : リニア・レギュレータについて
はじめに
この記事は、最も基本的な電源のレギュレーターの回路構成を理解し、その動きを解説します。レギュレータ自体については、多くの文献があり、資料もたくさんあります。それをここで同じような解説をするよりは、実際に回路を組んで試してみることに重きを置いてみました。普段は三端子レギュレータの恩恵に預かっている方も多いと思うので、この機会にその動作原理に触れてみてください。
もくじ
- 安定化回路
- リニア・レギュレータの動作原理
- リニア・レギュレータの基本回路と原理
- 保護回路
- スタートアップ回路
- まとめ
安定化回路
前回の記事で、平滑化された電源波形を確認しました。交流成分はだいぶ軽減されているものの、綺麗な直線にはなっていなかったと思います。ここからは、より直線的な電圧を取り出すための基礎回路を解説します。まずはじめに、安定化回路について説明します。理想的な直流電圧は、いつ、どんな負荷が接続されても一定の電圧を維持し続ける電源です。(図1)
図1 : 理想的な電圧を取り出すための安定化回路
そのためには、出力された電圧が常に一定になるように制御する必要があります。
その場合、有効な方法が出力の一部を入力部や回路の一部に戻す方法で、フィードバック制御(帰還)と言います。OPアンプなどアナログ回路でよく用いられる回路技術です。(図2)
図2 : 安定化回路のためのフィードバック制御
電源回路では、このようなフィードバック制御を含めた安定化させる電源回路を「レギュレータ」と呼んでいます。レギュレータは、主に4つの回路ブロックを構成する必要があります。(図3)
- 出力検出部
- 比較部
- 基準電圧
- 調整部
図3 : レギュレータの基本回路構成
一つ一つは、簡単な構成です。簡単に説明します。
出力検出部
この回路は、出力電圧の大きさを検出します。基本的には、抵抗による分圧回路になっているため、抵抗の比で検出する電圧の大きさを決めることができます。
比較回路部
比較回路部では、基準電圧と出力検出部の電圧を比較します。この差が小さくなるように調整部に流す電流を調整します。一般的には、コンパレータと呼ばれる回路になっており、OPアンプを用いています。
基準電圧
基準電圧は、一般的にツェナーダイオードを用いて、一定の電圧を維持します。
調整部
調整部は、比較部で得られた電流に応じて、出力電圧を調整します。
リニアレギュレータの動作原理
レギュレータの構成が理解できたら、具体的な動作原理をみてみましょう。リニアレギュレータは、「リニアレギュレータ 」「シリーズレギュレータ」「ボルテージレギュレータ(VR)」「ロードロップアウト(LDO)」の4つのタイプに分類することができます。
リニアレギュレータ
リニアレギュレータは、ここまで説明してきた回路説明そのものです。平滑化回路から得られた電圧は、まだ交流成分(リプル)が乗っているため、図のような電圧になっていますが、リプルを発熱という形で外部に逃すことで、より安定した電圧を得る工夫をしているます。
図4 : リプル分は、発熱させることで取り除く
この時、デバイスからの放熱では材質と構成の観点から限界があるため、一般的にはヒートシンクというパーツが取り付けられます。
ヒートシンクは、より空気と接触する面積を多くするためのひだがついており、デバイスにねじ止めされて使用します。
レギュレーターの基本回路を試す
ここでは、レギュレータの基本回路を実際のパーツを使って試してみたいと思います。
使用しているパーツは、R1とR2に470オームを使用します。
コンパレータに、LTC1541を使用します。
トランジスタは、NPNの2N3904を使用します。
どれも、ADAPL2000に入っているパーツで組んでみました。
図5 : 回路図
まずは、実機の前にLTspiceでシミュレーションしておきましょう。緑がVinです。赤い線がコンパレータへの基準電圧です。青い線が、Voutになります。実機で試しても、壊れないと判断しました。
図6 : LTspiceでシミュレーションした波形
実際に、ブレッドボードで組んだ回路。
図7 : 実際のブレッドボードに配置した様子
リファレンス電源には、ScopyのSignal Generatorから直流1Vを指定しておきます。
Vinには、ADALM2000の電源5Vを使用します。
図8 : Scopyの安定か電源の設定の様子
原理
原理的には、リファレンス電圧を調整して、3.3V近辺の電圧を得ることを目的としています。
この後で、リファレンス電圧を1V、2V、3Vに変化させた場合の波形を用意していますので、参照してみてください。
図9 : 1Vのリファレンス電圧
図10 : 1Vのリファレンス電圧の時の出力電圧
分かりにくいですが、CH1は、3.019Vを示しています。
次に、リファレンス電圧を2Vにしてみましょう。
図11 : 2Vのリファレンス電圧
図12 : 2Vのリファレンス電圧の時の出力電圧
2Vのリファレンス電圧のt機は、3.475Vを出力しています。
図13 : 3Vのリファレンス電圧
図14 : 3Vのリファレンス電圧の時の出力電圧
リニアレギュレータは、この回路をベースに、いろいろなバリエーションがあります。
それを紹介するだけでもかなりボリュームがありますので、まずはここでは基本的な動きと実際のパーツを使って、原理の理解にとどめました。ネット上の記事も、概ね回路図での説明で終わっていることがほとんどだと思います。
実際、この回路は3端子レギュレータとしてすでに内蔵されてしまっているので、あえてディスクリートで組む必要もないかもしれません。
ですが、この回路を自分のものとして理解し、体験することで、ブラックボックスの中身をより具体的にイメージしやすくなります。
当たり前ですが、実際に体験することに意味があります。
ここまで説明した基本回路に加えて、保護回路やスタートアップ回路を組み込むことで、より現実的なリニアレギュレータを構成することができます。
実際には、必要な電力を得るためにトランジスタ部分がダーリントン接続で結合されることもあります。
保護回路
保護回路は、調整部から出力された電圧に直列で抵抗を入れることで、電流を調整する機能です。その電流は、監視用トランジスタに接続されているため、調整部のトランジスタに流れ込む電流を調整することで、保護回路として機能します。(図15)
図15 : 保護回路
スタートアップ回路
スタートアップ回路は、供給された電源から安定化した回路に電源を流す際に、接続する負荷に関わらず確実に電流を流せるように構成された回路です。(図16)
図16 : 保護回路
まとめ
今回は、リニアレギュレータを考える上での基本的な構成について解説してみました。電源のエンジニアが減っている現状を踏まえ、電子工作レベルの方はもちろん、これから本格的に電源を学んでいくための最初の理解すべき基礎と言えます。

