~Maker Interview~

メーカのHOTなトピックス、今最も注力している製品にフォーカスし、
開発現場や製品企画担当の方々に戦略や今後の方針を語っていただくコーナー。
※最新の業界動向をお届けします。

白物家電のスマート化で拡大するリレー市場、信頼性と価格競争力の高さでシェア第1位を狙う

Leo Wang 氏 Leo Wang 氏

 白物家電や産業機器などのアプリケーションにおいて、入力部と出力部の接続に使われるリレー。コイルに電流を流し、発生する電磁力で機械的接点のオン/オフを切り替えるものだ。このため、メカニカル・リレーや有接点リレー、継電器、パワー・リレーなどと呼ばれるケースもある。

 リレーの歴史は古く、1835年にその原理は発明された。それから約185年経った現在でも、その役割の重要度は依然として高いままである。特に、白物家電や産業機器、照明器具などでは、重要度は高まる方向にある。市場規模も拡大している。2022年には、白物家電向けリレーの市場規模は、世界全体で12億米ドルに達する見込みだ。

 TE Connectivity社は、白物家電向けリレー市場を牽引するメーカーの1社である。現在は、世界第2位の市場シェア(TE Connectivity調べ)を 確保している。しかし、現状に満足しているわけではない。現状よりも市場シェアを高めて、「世界一」の座を狙っている。今回は、同社 Appliances Business Unit, Product ManagementでGlobal Product Managerを務めるLeo Wang氏に、白物家電向けリレーを取り巻く市場動向や、世界一の座をつかむための事業戦略、最新製品の詳細などについて聞いた(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。

白物家電向けリレーの現状を教えてほしい。

Wang 白物家電市場において、リレーは依然として重要な部品という位置付けにある。実際のところ、白物家電向けリレーの市場規模は拡大している。2017年には世界全体の市場規模は10億6600米ドルだったが、2022年には12億米ドルまで拡大する見込みだ。この5年間の年平均成長率(CAGR)は2.4%に達する。極めて安定した成長が見込める市場だと言えるだろう。

なぜ、白物家電向けリレー市場は伸びるのか。その要因を説明してほしい。

Wang 成長する最大の要因は、エアコンや冷蔵庫などにおいて「スマート・コネクテッド・テクノロジ」が適用されてことが挙げられるだろう。スマート・コネクテッド・テクノロジとは、例えば、無線LAN(Wi-Fi)機能の搭載である。最近では、白物家電に無線LAN機能が載ることは、そう珍しいことではなくなった。無線LAN機能を使えば、外出先からスマートフォンで自宅のエアコンを操作し、家に着くころには快適な温度にしておくことが可能になる。白物家電の「スマートさ」が大幅に高まるわけだ。

 白物家電がスマートになれば、その内部構成はより複雑になる。例えば、従来の白物家電ではリレーは1個しか使われなかったが、スマート化した白物家電では2個や3個のリレーが使われるようになるだろう。

 さらに白物家電のハイエンド化の影響も見逃せない。かつてのような単機能の白物家電は減り、さまざまな機能を搭載した多機能の「ハイエンド白物家電」が世界中で増えている。多機能化すればスマート化と同様に、内部構成が複雑になり、その結果としてリレーの搭載個数(員数)が増える。こうした背景が原動力となって、白物家電向けリレー市場は拡大して行くことになるだろう。

業界平均を上回る成長率を達成

TE Connectivityにおける白物家電向けリレー事業の最近の状況を教えてほしい。

白物家電向けリレー事業の現状

図1:白物家電向けリレー事業の現状
TE Connectivity社の白物家電向けリレー事業は順調に成長している。2017年の売上高は対前年比で11%増、2018年は同8%増と好調だった。

Wang とても好調だ。2017年の売上高は対前年比で11%増、2018年は同8%増を達成した(図1)。当社の成長率は、業界の平均に比べて3〜4倍と高い。

地域別の売上高を教えてほしい。

Wang 地域別にみるとアジアでの売上高の占める割合は75%と非常に多い。一方、米国や欧州の占める割合は25%にすぎない。しかし、日本を含めて米国や欧州での営業活動には力を入れている。米国や欧州、日本の営業/販売活動の結果としてデザインインを勝ち取り、製造を担当するアジアで売り上げが立つというケースが少なくないからだ。こうしたケースでは、売り上げは、アジア地域でカウントされるが、そもそも米国や欧州、日本での営業/販売活動がなければ得られなかった売り上げである。

ライバル企業はどこか。

Wang 最大のライバル企業は、機械式リレーにおいて市場シェア第1位の中国Xiamen Hongfa Electroacoustic社である。Hongfa社は、非常に広い製品ラインナップを用意しており、それを世界の幅広い市場に販売している。さらに価格競争力も高い。このため高い市場シェアを得ている。

 富士通コンポーネントやオムロン、パナソニックなどの日本メーカーもライバル企業として挙げられるだろう。ただし日本メーカーは、産業用途に特化する傾向にあるため、白物家電市場ではあまり強くない。さらに、アジア市場では大きな売上高を上げているが、欧州市場における競争力は比較的高くない。このため市場シェアは、Hongfa社や当社よりも低い水準にある。

 このほか、中国Song Chuan Precision社もライバル企業に挙げられるだろう。つまり、当社とオムロン、富士通コンポーネント、パナソニック、Song Chuan社が「Tier 2」を形成していると言える。

生産ラインの自動化を急ぐ

TE Connectivityが白物家電向けリレー事業で掲げる目標は何か?

白物家電向けリレー市場でシェア第1位を狙う

図2:白物家電向けリレー市場でシェア第1位を狙う
高い品質、高い価格競争力、グローバルな営業/販売体制、包括的なソリューションという4つのポイントで、「白物家電向けリレー市場でシェア第1位」という目標達成を狙う。

「PSoC Creater」を使って設計できる

図3:生産ラインの自動化が進む。

Wang 白物家電向けリレー世界市場においてトップ・サプライヤー、もしくはトップ・メーカーになることだ(図2)。

 この目標を達成するために欠かせないポイントは4つあると考えている。1つは、極めて高い品質を確保することだ。そのために現在、生産ラインの自動化を積極的に進めている(図3)。自動化を進めれば、人為的なミスなどによる不良品の発生や、品質の低下などを大幅に抑えられる。この結果、品質が極めて高いリレーを安定して製造できるようになる。2つめは、価格競争力を高めることだ。価格競争力についても、生産ラインの自動化が大きく貢献する。マニュアル(人間の手)に頼った生産ラインでは、人件費が上がればそれに応じて製品の価格も上昇し、価格競争力が低下してしまう。しかし生産ラインを自動化すれば、人件費の影響は非常に小さくなり、一定の価格で製品を生産できるようになる。

 3つめは、グローバルな営業/販売体制を構築することである。すでに当社は、重要な顧客(キー・カスタマ)に合わせて、世界各地に営業/販売オフィスを開設している。今後は、そうしたオフィスの営業力やサービス力の向上に取り組みたい。4つめは、包括的なソリューションを提供することである。当社は、コネクタでも高い市場シェアを獲得しており、白物家電メーカーに対してコネクタとリレーを供給できる数少ないメーカーのひとつである。コネクタとリレーを合わせれば、1つのコンプリート・ソリューションを提供できるようになる。カスタマの視点から見れば、ワン・ストップ・ショッピングが可能になるわけだ。このメリットは非常に大きいと考えている。

日本のユーザーに対するサービスにおいて、特に注意している点や注力している点は何か?

Wang 日本のユーザーの要求は、アジアのユーザーに比べると厳しい。このため、短いリードタイムや、質問に対するクイック・レスポンスを心掛けている。

 この点については、ビジネス・パートナーである電子部品商社の協力を得て、日本のユーザーの要求に応えられるように努力している。日本市場では、電子部品商社が果たす役割は大きい。なぜならば、日本市場における当社のビジネスのうち、直接販売するダイレクト・ビジネスが50%で、電子部品商社経由で販売するチャネル・ビジネスが50%であるからだ。つまり、チャネル・ビジネスの占める割合が比較的大きい。一方でアジア市場では、ダイレクト・ビジネスが80%と多く、チャネル・ビジネスは20%にすぎない。

低背品で白物家電の小型化に貢献

現在どのような製品を市場に投入しているのか教えてほしい。

6つの製品シリーズを用意

図4:6つの製品シリーズを用意
「PSoC 4700」である。CPUコアには、英Arm社の「Cortex-M0+」を搭載。このほか、「CapSense」やシングルスロープ方式の10ビットA-Dコンバータ、2個の7ビット電流出力D-Aコンバータ、コンパレータなどを1チップに集積した。

Wang 白物家電市場に向けては、6つの製品シリーズを用意している(図4)。3〜5Aに対応する「PCJシリーズ」、3〜10Aに対応する「OJシリーズ」、5〜10Aに対応する「PCHシリーズ」、15Aに対応する「OMIHシリーズ」、16Aに対応する「RZFシリーズ」、20〜25Aに対応する「PCFシリーズ」である。この6シリーズで、エアコンや食器洗浄器、冷蔵庫、洗濯機などの主要な白物家電や。コーヒーメーカーやトースター、電子ケトルなどの小型の白物家電に対応している。

 このほか、電力メーターや照明器具、プログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)などの産業機器でも採用されている。産業機器でも、製品によっては低価格化が求められるものもある。そこで白物家電に向けたリレーを採用して、低価格化を図っている。

最新の製品を紹介してほしい。

低背化を実現した「RZFシリーズ」

図5:低背化を実現した「RZFシリーズ」
実装高さはわずか27.6mmである。定格電流が16A の白物家電向けリレーでは、業界で最低レベルの実装高さを実現したという。

Wang 新しい製品シリーズである「RZFシリーズ」を紹介したい(図5)。定格電圧はAC250Vで、定格電流は16A。接点構成は「1 Form A(単極単投)」である。このRZFシリーズには、複数のユーザー・メリットがある。

 1つめは、実際高さが27.6mmと低いことである。定格電流が16Aの競合他社品と比べると20%の低背化を実現しており、実装高さは業界で最低レベルの製品だ。リレーでは、低背化に対する要求が強い。プリント基板に実装される部品の中でリレーは最も背の高いものだからだ。従って、低背化を実現すれば、白物家電などの小型化が可能になる。

 2つめは、すべて自動化ラインで製造したことだ。マニュアル(人手)による生産工程は一切ない。このため信頼性が高く、コスト競争力にも優れている。3つめは、さまざまな国際的な安全規格を取得していることである。例えば、ULや VDEで、CQCなどの安全規格を取得済みだ。このため、世界各地で販売するグローバルな白物家電などに適用できる。

具体的には、どのように白物家電に使えるのか。

Wang 主要なアプリケーションは電子レンジや自動販売機、給湯器、オーブンレンジなどである。さらに定格電流が16Aと比較的大きいため、産業機器にも適用できるだろう。産業機器にも、積極的に売り込んでいきたいと考えている。

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RZF リレーは、類似のリレーよりも低背で最大 16 A の定格であり、
電子レンジ、給湯器、電気調理レンジ、自動販売機、およびその他の産業用/商用アプリケーションに適しています。

TE Connectivity (TE) はリレーの製造で世界をリードする企業であり、
一貫した高品質の革新的なリレー製品およびシステム ソリューションを提供しています。
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