
TE Connectivityのルーツは、かつての「コネクタの雄」であるAMP社にある。そのAMP社とTyco International社が合併する形で、1999年に誕生したのがTyco Electronics(タイコ エレクトロニクス)社であり、現在はTE Connectivity(TEコネクティビティ)となっている。その後も精力的に買収を進め、熱収縮チューブや回路保護素子の第一人者だったRaychem社などを傘下に収める。いまや接続デバイスを中心に据える世界的な電子デバイス企業へと成長した。2017年の売上高は130億米ドル(1.42兆円)にのぼる。
現在、その同社が市場開拓に特に注力しているのがセンサーである。今後センサーは、IoT(Internet of Things)や自動車、ロボット、民生機器などの市場において需要が急拡大すると期待されており、世界中のさまざまな企業が虎視眈眈とシェア拡大を目指している。そうした中にあって、TE Connectivityはどのような戦略で他社との競争を勝ち抜こうとしているのか。今回は、TE ConnectivityでGlobal Accounts & TESS部門のSenior Managerを務めるBW Tan氏と、TE Connectivity Sensor Solutions Sales and Business Development, Asia部門でFAE Managerを務めるCedric Guo氏、タイコ エレクトロニクス ジャパン センサ ソリューションズ セールス・ビジネスディペロップメント アジア部門でカントリー セールスマネージャーを務める関口慎悟氏に話を聞いた
(聞き手:山下勝己=技術ジャーナリスト)。
TEは、コネクタに強みを持つ電子部品メーカーというイメージが強い。
関口 ご指摘の通り、「TEと言えばコネクタ」。そう認識してもらっているユーザーは非常に多い。しかし、実はあまり知られていないのだが、当社はセンサー市場でも世界的に強い立場を築いている。特に品揃えは極めて豊富で、幅広い業界のアプリケーションに最適なセンサーソリューションのポートフォリオを提供している。
センサーの市場規模は、どのくらいの額なのか。
確かに、TEがセンサーソリューションのグローバルテクノロジーリーダーであるという認識はない。なぜ、一足飛びにそうした地位を獲得することができたのか。
どのようなセンサー・メーカーを買収したのか。代表的なメーカーを紹介してほしい。
関口 まずは、2014年10月に買収したMeasurement Specialties社が挙げられるだろう。同社は、厳しい環境下での使用に向けた圧力センサーや温度センサーを得意としており、MEMS圧力センサーやNTCサーミスタ、熱電対(サーモカップル)、サーモパイルなどを手掛けている。
このほかの代表的な企業としては、AST(American Sensor Technologies)社やCelesco社、Piezofilm Sensors社などがある。AST社は2014年9月に買収した企業で、圧力トランスデューサーやリニア可変差動変圧器(LVDT:Linear Variable Differential Transformer)方式の位置センサーに強みを持つ。Celesco社は、ケーブル作動式の位置センサー(スプリングポテンショメーター)における世界のトップ企業だ。Piezofilm Sensors社は、ポリマー材料で作成したピエゾ・フィルムを使った振動センサーや加速度センサーなどを提供している。
幅広いポートフォリオから市場に応じた最適なセンサーを提供
主なターゲット市場はどこか。
関口 5つの市場に照準を合わせている(図3)。1つ目は「IoT(Internet of Things)」。2つ目は「安全」である。特に自動車を強く意識している。現時点ですでに自動車はセンサーの塊だが、今後もさまざまなセンサーが搭載されて行くだろう。3つ目は、「リアルタイム監視」。4つ目は「グリーン」。センサーを活用した電子機器の高効率化や、HEMS(Home Energy Management System )などが含まれる。5つ目は、「スマートマニュファクチャリング」である。
1つ目のIoTについては、さまざまなIoTが存在する中で、「IIoT(Industries IoT)」に注目している。工場のさまざまな場所にセンサーを設置して、振動や音などのデータを取得し、それらをデータベース化する。そうしたデータを解析することで製造ラインなどの故障を予知し、実際に故障してしまう前にメンテナンスを実行するわけだ。製造ラインが停まれば、製品を製造できない。停まっている期間は機会損失になる。それを防止するメリットは非常に大きい。
センサーの生産工場は、どのような体制になっているのか。買収した各センサー・メーカーの生産工場をそのまま活用しているのか。
関口 生産工場は米国に9カ所、欧州に11カ所、アジアに4カ所ある。現在もなお、買収した企業の生産工場を整理/統合する作業の過程にある。今後もさらに、統合を進める予定だが、自然災害が起きても製品の供給を継続するBCM (Business Continuity Management)の観点も重要だ。このため、1つのセンサーを複数の工場で生産できる体制を構築している。
TEが提供するセンサーの形態は、素子(エレメント)だけないのか。それとも、モジュールやシステムなども手掛けているのか。
Tan エレメントだけではない。センサーモジュールでも提供しているし、カスタムでのアプリケーション開発にも対応している。従って、当社の顧客(カスタマ)は電子機器メーカーだけでなく、キーエンスやオムロンなどのセンサー・モジュール・メーカーや、Honeywell社やEmerson Electric社、SICK社などのセンサー・サブシステム・メーカーなども含まれている。
産業機器向けに強み
実際に、どのようなセンサーを用意しているのか。具体的な製品を紹介して欲しい。
いくつか特徴的な製品を紹介して欲しい。
Guo 例えば、Bluetooth機能を搭載した圧力センサーがある(図5)。圧力の測定データはBluetoothを使って無線伝送するため、システム本体と接続するケーブルが不要になる。そのため、インストールが非常に簡単というメリットがある。産業機器が主なアプリケーションである。
前述のLVDT方式のリニア位置センサーも特徴的な製品である(図6)。これは、センサーと機械的に接続した物体の直線運動を電気信号に変換するものだ。特徴は、測定分解能や再現性が高く、極めて過酷な環境で使用でき、長い耐久年数を実現できる点にある。50万回繰り返し使用しても、測定精度は劣化しない。航空機やヘリコプター、油圧システムなどに向ける。
ピエゾ・フィルムを使った振動センサーは、例えばハードディスク装置(HDD)の落下検知などに使われている。さらに興味深い用途として、ベッドの下に敷いて振動を検出する用途にも適用されている。振動を解析することで、呼吸数や心拍数などのバイタル情報を取得できる。
国内のFAE体制を整備へ
センサーの営業方法について聞きたい。顧客から「○○センサーがほしい」といった連絡が入り、営業活動を始めることになるのか。
関口 そうしたケースも少なくないが、意外に多いのが「こういう情報を取得したいのだが、どうすればいいのか」といった相談から始まる場合である。顧客は必ずしも、最適なセンサーをあらかじめ特定できているとは限らない。その場合は、当社のFAE(Field Application Engineer)が顧客のアプリケーションの状況を聞いて、最適なセンサーを提案することになる。「コンサルティング」に近いかもしれない。
さらに、何らかのセンサーをすでに利用している顧客の中には、そのセンサーに不満を持っている人が少なくない。「精度が十分ではない」「耐環境性に問題がある」「新しいテクノロジを採用した製品に移行したい」などの不満である。こうしたケースも、当社のFAEが顧客の話を聞いて、最適な代替案を提案することになる。
日本市場におけるFAEの体制はどうなっているのか。
関口 日本ではまだ、FAE体制は未整備の状態にある。現在は、中国の深センで働いているFAEが日本も担当しているのが実情だ。しかし、日本市場は極めて重要だと認識している。今後急いでFAE体制を整備する予定である。
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